フードテック企業が躍進、コロナで脚光浴びる植物肉

企業が打ち出すSDGsやパーパスの「アイコン」へ

朝岡 崇史/2020.10.16

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 スタンフォード大学の生化学教授でもあったパトリック・ブラウン(現CEO)は牧畜を地球最大の環境破壊と捉え、動物と自然を犠牲にしながら人間が肉を食べることはPrehistoric(過去のこと)でDestructive(破壊的なこと)と考えた。しかし肉を食べたいという生理的な欲求自体は止めることはできないので、植物肉でそれを代替することを目指しているというのだ。そして言うまでもなく、その対象はベジタリアンやビーガンという限られた食習慣のグループではなく、日頃から食肉をたくさん食べる一般の人たちである。

 今年1月にCES 2020の会場でこのスローガンを目にしたときは、いささかラディカルな思想では・・・と感じたものだが、SDGsやパーパスの浸透、さらにはコロナ禍での食肉のサプライチェーン崩壊が強い追い風になって、少なくとも米国でのシナリオはパトリック・ブラウンの思惑通りの筋書きで進んでいるようだ。

 具体的な事例としてあげられるのは米スターバックスの動向だ。今年の6月23日からスターバックスはインポッシブル・フーズから植物肉の供給を受け、「インポッシブル・ブレックファスト・サンドイッチ」を朝食メニューに加えた。

 このサンドイッチは植物肉のパテイを平飼いの鶏卵の目玉焼き、チェダーチーズと一緒にチャパッタというイタリアのパンに挟んだもので、価格は4.95ドルから5.25ドル(約530円から550円)という。

米スターバックスが発売した「インポッシブル・ブレックファスト・サンドイッチ」(starbacks.comより)

 スターバックスは2020年1月、よりサステイナブルな企業になるために「リソース・ポジティブ」(地球の資源を消費する以上に生み出していく)を標榜し、今後数十年にわたる目標と企業活動を設定した。もちろん、植物肉のメニューの採用は「リソース・ポジティブ」を目指す同社にとって優先順位が高い、必然的な企業活動だ。

 事実、スターバックスとの提携にあたり、パトリック・ブラウンCEOは「より多くの植物由来の素材をメニューに加えるというスターバックスの取り組みは、他の大企業にとっても新たなベンチマークになる」とコメントしたと伝えられる(参考:『BUSINESS INSIDER』Starbucks ties up with Impossible Foods to sell a new plant-based breakfast sandwich on revamped summer menu.

 植物肉の原料である大豆は遺伝子組み換えの品種が使われていること、本物の肉に近い「味」「香り」「見た目」「食感」を出すために、植物肉には脂肪や塩分の含有量が多い、調味料が必要以上に多く使われているという批判も一部ではある。しかし、スターバックスのように影響力が大きく、ベンチマークになるグローバル企業がその旗色を鮮明にすることによって、コロナ禍で注目を浴びた植物肉は、社会的な責任を打ち出したいと考える日本企業にとってもわかりやすい「アイコン」になっていく。

 米国同様、植物肉が日本でも「引く手あまた」になる日は遠くないだろう。