日本を代表する企業のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)はスタートアップエコシステムの現状をどう見ているのか。スタートアップと大企業の交流がもたらす意義や日本経済に与えるベネフィットについてどう考えているのか。ロッテベンチャーズ・ジャパンの代表取締役会長、澤田貴司氏を迎えたインタビューの後編では、日本のスタートアップの現在地と日本におけるCVC活動の可能性について、CVCコミュニティー「FIRST CVC」代表の山田一慶氏が澤田氏に聞いた。
<ラインアップ>
【前編】元ファミマ社長の澤田貴司氏は、なぜロッテグループのCVCに転じたのか?
【後編】希代のプロ経営者・澤田貴司氏は日本のCVC市場をどう見ているのか?(本稿)
なぜ現場主義が大事なのか
山田一慶氏(以下敬称略) 日本のスタートアップの現在地について、いくつかの観点からお伺いします。起業家とベンチャーキャピタル(VC)、CVCから成るスタートアップエコシステムに対してどのような印象をお持ちですか。
澤田貴司氏(以下敬称略) 功罪あると思います。かつては現在のようなエコシステムは存在しませんでした。それができていて資金が付いてくるのは素晴らしいことだと思います。これが“功”の部分。
山田 私も2015年にスタートアップ(よりそう)に行った時に、まだベンチャーと呼ばれていて、VCも恐らく30社ぐらいしかなくて、「ここから断られたら、もう資金調達ができなくなってしまう」という感じでしたから、良いことだと思います。
澤田 一方、“罪”の部分は、なんちゃって投資家、なんちゃって起業家が群がっていることです。ちゃんとした人も当然いますが、そうじゃない人も散見されるので気を付けないといけないと思います
繰り返しになりますが、スタートアップの取り組みにお金が回るようになってきた状況に関しては、ポジティブに捉えています。私もリヴァンプを創業した時に、キャッシュフローが途絶えて、資金繰りに窮した経験がありますから。
山田 リヴァンプとはもちろんスケールが違いますが、2013年、2014年ぐらいはスタートアップ、ベンチャーも1億円調達できるだけですごいと言われていた中で、金額の桁が変わったことは隔世の感があります。
ところで、澤田さんと言えば小売りの名経営者たちから学び、ファミリーマート時代には徹底した現場主義を実践してこられましたが、スタートアップの経営における現場主義についてどう考えますか。スタートアップの経営者に対してどのような指導をされたりしますか。