設立から1年半が経過したロッテホールディングス100%子会社のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)、ロッテベンチャーズ・ジャパンが活動を本格化している。同社の会長を務めるのは、ファーストリテイリング副社長、ファミリーマート社長などを務めた澤田貴司氏だ。起業家、経営者として豊富な経験と実績を誇る澤田氏は、CVCという新たなステージでどのようなインパクトを創出しようとしているのか。前後編の前編となる本稿では、ロッテグループのCVC活動について、CVCコミュニティー「FIRST CVC」代表の山田一慶氏が澤田氏に聞いた。
<ラインアップ>
【前編】元ファミマ社長の澤田貴司氏は、なぜロッテグループのCVCに転じたのか?(本稿)
【後編】希代のプロ経営者・澤田貴司氏は日本のCVC市場をどう見ているのか?
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ロッテのCVCというチャレンジを受けた理由
山田一慶氏(以下敬称略) 本日は貴重な機会をありがとうございます。本題に入る前に簡単に自己紹介させてください。
私はニューヨーク市立大学でファイナンスを学び、日本GEのファイナンス・マネジメント・プログラムを経て、2013年にソフトバンクの孫社長特命チームの財務担当としてロボット事業(Pepper)の立ち上げを経験しました。2015年に葬儀ベンチャー「よりそう」の取締役CFOに就任した後、2020年に起業し、現在は国内最大級のCVCコミュニティー「FIRST CVC」の代表を務めています。
澤田貴司氏(以下敬称略) 素晴らしいキャリアですね。
山田 ありがとうございます。最初にお伺いしたいのはロッテグループのCVCの活動についてです。澤田さんはなぜロッテのCVCという新たなチャレンジを引き受けたのか、その背景や理由についてお聞かせください。
澤田 ロッテグループのオーナーである重光昭夫さんからオファーを受けたからです。重光さんとは20年以上にわたる友人で、ビジネスパートナーでもあります。
初めてお会いしたのは私がまだファーストリテイリングにいた頃です。「ユニクロを韓国でやりたい」とご連絡をいただいて、海外展開を加速させたいユニクロと利害が一致し、韓国進出が決まりました。
ファーストリテイリングを辞めて投資ファンドKIACON(キアコン)を立ち上げた時や、KIACONを畳んで経営支援のリヴァンプを創業した時など、折に触れてご連絡をいただいて、ロッテ免税店を銀座に展開したり、クリスピー・クリーム・ドーナツを共同で運営したりしてきました。
今回ファミリーマートの任務が終了したので、ちょっとゆっくりしようかなと思っていたところ、またお声掛けをいただきました。
韓国のロッテベンチャーズは2016年に立ち上がっています。日本のロッテはお菓子の製造・販売に特化していて、売上高は約3000億円です。一方の韓国は約8兆円のコングロマリットで規模が違います。「もっといろんなチャレンジをしたいので、手伝ってほしい」と重光さんから言われました。
重光さんから声を掛けられたらノーとは言えません(笑)。ただ私もCVCは初めてだったので、「会長をさせて下さい」とお願いしました。社長は投資業務の経験者を採用し、二人三脚でやらせてくださいとお願いして、OKをもらいました。
山田 澤田さんがロッテベンチャーズ・ジャパンでつくり出したいインパクトや目指す姿とはどういったものですか。
澤田 純粋にベンチャー企業を応援できる組織です。資金を投じるだけでなく、われわれが持っているネットワークやこれまで培った経営に関する知見も含めて、いろいろな形でバックアップし、投資先を成功に導く。そんな組織になっていきたいと考えています。
山田 私もCFOの時に合計30億円の資金調達を経験したことがあります。お金だけでは成長に限界があって、そうしたときに大企業から事業面でのサポートが得られるようなつながりをもっとスムーズに築けたらと痛感したことを思い出します。
改めて、ロッテベンチャーズ・ジャパンの概要について教えていただけますか。