国民に自粛を求めるのも結構だが、医療制度の問題にもっと焦点を当ててもいい

 新型コロナウイルス感染症の第3波で感染者が急増し、2021年1月7日には11都府県に緊急事態宣言が発出され、現在(2月11日)も10都府県に出されたままである。

 日本の何十倍も多くの感染者や死者を出している米国やインド、ブラジル、その他のどの国でも医療崩壊は聞かれない。

 医療資源が世界一と言われ、感染者や死者も人口比では著しく少ない日本においてだけ「医療崩壊」の危機がなぜ起きるのか不思議であった。

 その回答がようやく医師や医療に詳しい評論家などから指摘され始めた。

 以下、主として評論家・八幡和郎氏「医療崩壊するのは医者がダメだから」、医師・元厚労省技官・木村盛世氏「厚労省と日本医師会の無為無策が危機作った」(以上『正論』令和3年3月号所収)、小西美術工藝社社長・デービッド・アトキンソン氏「コロナ感染者を見捨てる 日本医師会とご都合主義者たち」、文藝評論家・社団法人日本平和学研究所理事長・小川榮太郎氏「東京都医師会会長尾崎治夫の恐るべき『破壊洗脳活動』」(以上『Hanada』2021年3月号所収)を参照して論述する。

日本医師会会長らの言動と責務

 戦後日本の医療制度は、非常時対応ではなく団塊世代が平穏に高齢化を迎えるように、民間病院をなるべく多くするようにしてきたといわれる。

 したがって、今次のコロナ対処においては、政府などが強権力を発揮できない分、民間病院の医師を主な会員とする日本医師会や東京都医師会などの協力に依存するほかない。

 日本においては、首相や知事などが指示や命令を出せる公的病院は約20%でしかない。約80%の民間病院の協力を得るには、これを開設・経営する開業医を主体とする各レベルの医師会の「協力」が不可欠である。

 開業医の多くが日本医師会、その傘下にある都道府県医師会に加入しており、各会長の意向が協力の要であったが、コロナ感染者がどんどん増大していっても民間病院の多くはコロナ患者に関与する意思を見せなかった。

 日本医師会の中川敏男会長は「コロナ患者を診る医療機関と通常の医療機関が役割分担をした結果だ。民間病院は面として地域医療を支えている」と語り、また、「医療は逼迫しており、医療崩壊の危険性があること、民間病院は新型コロナウイルス以外の疾患で忙しい旨の発言」(木村氏)をして憚らなかった。