1月8日に始まった緊急事態宣言は、間もなく期限の2月7日を迎える。日本は第三波に直面しており、「GoToトラベル」や「GoTo イート」、「ビジネス来訪者」の受入れなど、様々な理由が原因として挙げられてきた。東京を例に取れば、緊急事態宣言で2000人を超える事態は去った印象ながら、今でも感染者は1000人前後で推移している。やがて500人程度になるだろうが、それでも第一波や第二波の時からすれば大変な感染者数だ。大阪ほかの地域でも深刻な状況である。
読者の皆さんは既に様々なデータをご覧になったと思うが、12月からの新規感染者数の急増もさることながら、重症患者数や死者数の変化率だけ見れば、決して日本が安全な地域ではないと誰もが感じることだろう。昨春には、「日本人はBCGワクチンを打っているから大丈夫」などの日本特殊説や日本モデルが話題となったが、それもどうやら確かではなかったようだ。「伝染病は人を差別しない」との格言は日本でも証明されてしまった。
この間、米国でもコロナ禍は拡大を続けている。一部にはニューヨーク州とカリフォルニア州はロックダウンをしているのに感染拡大が続いているとの報道もあるが、両州はロックダウンをしていない。
ニューヨーク州は、ニューヨーク市だけが店内での飲食を再度禁止したが、店外であれば飲食可能だ。また、他の都市は通常の営業が認められている。カリフォルニア州も、都市によってステイ・アット・ホーム(家にいることを要請)宣言を出しているが、部分的である。両州とも営業時間に制限はない。つまり、米国でも感染の酷い両州において、移動制限の不十分さが感染の拡大継続に影響している可能性は否定できない。
結局、「人命優先か、経済優先か」ではなく、「人命優先」で人の動きを止めない限り、感染は止まらないというのが真実なのだろう。そうすると、巷間言われているような海外からの進入が問題なのであれば、「入国者への14日間の自粛」「症状が軽い人の自宅待機」といった判断が本当に正しいのかを改めて考える必要があるのではないだろうか。
しかも、先進7カ国の中で、日本だけがワクチン接種を開始できていない。他の6カ国と比べて既に1カ月の遅れであり、日本政府が発表している計画を前提とすると2カ月遅れとなる。中国やインドでもワクチンを接種し始めている。ここにきて、ワクチン開発力の不足が思わぬ結果となっているという印象は否めない。
そこで、本稿では、14世紀前半に始まった黒死病第二波の経験から、我々に参考となるのではないかと思うものを取り上げてみたい。ただし、筆者は感染症学者ではなく、中世欧州を対象とする歴史学者でもないので、あくまで当時の記録やそれを基にした資料などを読んだ経験からのものである。