一番好きな16号線の風景は根岸から走水にかけて
──16号線以外に興味を持っていらっしゃる地域と、一番好きな16号線エリアの場所を教えてください。
柳瀬:先ほどお話したように16号線の地形のポイントは、巨大の内海を台地と丘陵が取り囲んでいて小流域がたくさんあるということです。16号線エリア以外でも、日本で文明が発達した場所は、同じ条件を整えているところが多い。
典型は長野県の諏訪湖エリアです。巨大な内海である諏訪湖の周辺を山が取り囲んでいて、小さな流域が流れ込んでいる。諏訪湖は日本を代表する精密機器企業の発祥地ですが、16号線と同じようにやはりシルク、生糸のメッカでもありました。
近畿地方ではやはり京都や奈良が注目されがちですが、忘れてはならないは、その横にある琵琶湖地域です。琵琶湖も丘陵地帯と山で囲まれていて、小流域が流れ込む北部には日本海がすぐ近くに迫っています。大阪にはやはり巨大な干潟があり、日本最大の内海である瀬戸内が広がっています。
そうやって見てみると、日本というのは巨大な内海に流れ込む河川の間にできた山や台地、丘陵地帯に連なる小流域に文明ができている、といえるのではないか。今回、私が書いたような形でほぐしていくともっと面白い文明の見方ができるのではないかと思います。
16号線で一番好きなのは、幼少の頃から住んでいた場所というのと学生時代から通っていたということもあって、横浜の根岸のあたりから横須賀の走水まで抜けるところです。狭い谷といくつものトンネルを抜けた先にバーッと海と空が広がる。僕の16号線の原風景の一つになっています。(構成:添田愛沙)