横浜の山手の丘をバックに「いいね!」ポーズを決める横山剣さん(撮影:青木 登/新潮社写真部、以下同)

(東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 教授:柳瀬 博一)

 トンネル抜ければ海が見えるから
 そのままドンつきの三笠公園で
 あの頃みたいに ダサいスカジャン着て
 お前待ってるから 急いで来いよ
 (作詞・作曲 横山剣、『Soul Punch』2005より)

 このたび上梓した『国道16号線』(新潮社)という本で、“東洋一のサウンドマシーン”ことクレイジーケンバンド(CKB)の「タイガー&ドラゴン」の歌詞を引用させていただいた。この一節は、国道16号線が走る三浦半島の独特な「地形」を、まさに端的に表現しているからだ。

 タイガー&ドラゴンに限らず、クレイジーケンバンドの音楽は国道16号線と密接に結びついている。横浜・本牧で育ち、今も本牧に居を構える横山剣さんが生み出す楽曲の多くは、横浜や横須賀など国道16号線沿いのエリアを舞台とし、その地域の空気感を濃密に漂わせている。

 10月21日にリリースしたニューアルバム『NOW』も例外ではない。たとえば「ヨコスカ慕情」や「愛があれば年の差なんて」などを聞くと、16号線沿いの景色や情感、匂いまでもが色鮮やかに立ち現れてくる。

 横山さんにとって国道16号線はどんな存在なのか、16号線沿いの佇まいはクレイジーケンバンドの音楽にどのように反映されているのか。ご本人にお話を伺った。

コロナ禍のなかで生まれた『NOW』

柳瀬 横山さんの音楽はクレイジーケンバンドの前身のCK'Sの頃から聞いています。『NOW』も素晴らしい曲ばかりで、毎日のように聞かせていただいています。

横山 ありがとうございます。

柳瀬 今回のアルバムタイトルは『NOW』です。ストレートにお聞きしますが、なぜ『NOW』なんでしょうか。

横山 今年は新型コロナのせいでかつてない状況になりまして、まさに「今」を実感する時代ですよね。私もステイホームしていたわけですけど、家のなかを掃除していたら過去の古い音源や映像、書類がいっぱい出てきたんです。そういうのを見たり聞いたりしていたら、ますます今を実感したといいますか。