横山 なぜそうなったかというと、子供の時からいろいろな音楽に囲まれていたということがありますし、ジャンルやアーティストで好きになるんじゃなくて楽曲単位で好きになっていたというのもありますよね。よく先輩の家に行って、先輩が持っているレコードの中から好きな曲だけカセットに録音させてもらい、自分なりのベスト盤みたいなものを作っていました。
あと、僕の周りはわりと音楽のジャンルにとらわれない人が多かった。ソウルも好きなんだけど「ぴんから兄弟の宮史郎はジェームス・ブラウンだよな」とか言う人がいたりして。最初にそう言われたときは、え? 髪形が似ているからなのかな、なんて思ったんですけど、そうじゃなくて確かに空気感、匂いが同じだなと自分も気づくようになって。B.B.キングのツアーバスも、あ、これ旅芸人の空気感だな、なんて感じたり。春日八郎ビッグショーの世界というんでしょうか。
柳瀬 ああ、すごくわかります。
横山 そういう共通する香りがあるんですよね。言葉で言うと分からなくなっちゃうんですけど、僕の周りにそういうセンスの人が多かったというのはありますね。
柳瀬 垣根なく聞いて、自分がいいなと思うものをどんどん混ぜる、ミックスしていくんですね。いい意味で節操なく。
横山 そうですね。どれも自分にとってはかっこいいんですよ。JB(ジェームス・ブラウン)も永ちゃんもユーミンさんも山下達郎さんも、春日八郎も宮史郎も、全部かっこいいんです。
三波春夫さんの『俵星玄蕃(たわらぼしげんば)』なんてフルで聴くと、もう痺れますよ。JBと同じぐらい痺れます。そうしたらあるとき、達郎さんが自分のラジオ番組で俵星玄蕃をかけていて、ああ、やっぱりそういうことだよねと。音楽は本気度というか覚悟というか、そういう何かがリアルに伝播していれば同じなんだと。ユーミンさんも、ものすごく幅広いし。
柳瀬 達郎さんもユーミンさんも本当に幅広いですよね。
横山 僕が好きな人はみんなそういうところがありますよね。
横須賀で感じる不思議な気配
柳瀬 横山さんは、横浜や横須賀の、微妙な夏の始まりや終わりをいつも実にビビッドに描かれていますよね。今回も強くそれを感じました。
横山 感じたままを出しているんですが、この地域ならではの香りというか、空気感というか、季節の移り変わりが空気の粒に含まれているのを感じ取るというのはありますね。山手なんかを車で走っていると、なにか東京とは違う香りがするんですよ。