福生、八王子の特別な空気
柳瀬 横浜、横須賀と並んで横山さんと縁が深い街に、東京・福生(ふっさ)がありますよね。2019年のツアー(「CRAZY KEN BAND TOUR PACIFIC 2019」)は福生から始まりました。「LADY MUSTANG」(2007年)の歌詞にも福生が登場しています。福生も16号線を最も象徴する街の1つだと思うんですが、横山さんから見て福生はどんなイメージですか。
横山 横須賀にも横浜にもない、特別な雰囲気がありますね。横須賀は海軍基地、福生は空軍基地の街ですから、また違った空気感で。
多摩川に沿った東京郊外の急所、ツボみたいな世界という感じがあります。中央フリーウェイ的な、スペイシーな感じもして。ユーミンの痕跡もあれば、大滝詠一さんの世界もまた垣間見えるという。
柳瀬 横浜から16号線をちょっと走っていくだけで、また全然違う異国感がありますよね。
横山 そうなんですよ。福生ならではのかなり濃い異国感がありますね。
柳瀬 16号線に沿って、福生のすぐ南は八王子です。ユーミンさんは八王子の出身でしたよね。
横山 ユーミンさんと対談したときに、まさに16号線の話になったんですよ。そのときユーミンさんが、「最近、イタリアンツイストの曲で、クレイジーケンバンドがやったら合うような曲を作ったのよ」とおっしゃって。それが「哀しみのルート16」だったんです。その曲を聞いたとき、うわあこの感じ、まさに自分が思ってた感じだって。
柳瀬 あの曲は、ダンサブルなのに悲しい感じが、そのまま国道16号ですよね。
横山 そうなんです。陽気なのに、悲しい。「ルージュの伝言」もそうですが、明るい曲だけどどこか悲しみがあってアンニュイみたいな。そういうところがすごくいいんですよね。あの空気感ってやっぱり16号線が育んだ感性なのかなって、16号を走るたびに思うんですね。
柳瀬 八王子のほうまで運転することがありますか。
横山 福生とか八王子にコンサートに行くときは、必ず16号を走っていました。今は圏央道ができたのでルートは変わりましたけど、できるまでは16号を自分で運転して。
車の窓からの景色がすごくぐっとくるんですよね。とくに八王子は不思議な、なにか神がかったパワーを感じます。皇室の大きなお墓(武蔵陵墓地)とかパワースポットもいっぱいありますし。16号線沿いというのは何かそういう特別な空気がありますよね。
昔は生糸も運んだし、米軍の物資を運ぶ軍用的な使われ方もしてましたし、そういう歴史もあるからなんでしょうね。やっぱり拭(ぬぐ)えない何かがある感じですよね、16号って。