あと、ユーミンさんからいただいた暑中見舞いに、過去の自分が今を助け今の自分が未来をつくるよ、と書かれていたんですね。その暑中見舞いを机の上にずっと置いていたんですが、確かにそうだよな、なんて思ったりして。そういう中でのインスピレーションですね。『NOW』がぱっと出てきた。

NOW』クレイジーケンバンド

柳瀬 今回は『NOW』の発売前に「愛があるなら年の差なんて」を先行配信されました。ミュージックビデオの最初と最後には、ユーミンさんの「海を見ていた午後」で有名なカフェレストラン「ドルフィン」(横浜・根岸)の坂が映りますよね。

横山 はい、不動坂ですね。

柳瀬 歌詞も映像も、過去と現在、未来を行ったり来たりしている感があります。

横山 何かいろいろなことがシンクロしますよね、あの坂は。

柳瀬 そして、根岸の風景の映像が曲と見事にマッチしている。僕も子供の頃、本牧の近くに住んでいた時期がありますので、あの空気感が他人事ではなく実感として分かるんです。

横山 ああ、そうなんですね。

柳瀬 4曲目の「IVORY」のミュージックビデオも歌と映像がすごくシンクロして横浜の本牧や山手の空気を伝えています。横山さんとしては、今回のアルバムであの一帯をどんな雰囲気で表現したかったんでしょうか。

横山 そうですね。もの悲しさや、ちょっとうら寂しい感じ、というのはありますよね。特に「IVORY」はその思いが強かったんですけど。もちろんそれだけに限らず、いろいろ複雑な感情や思いが込められてはいるんですが、今回は何かそういうところから自然に押し出された感じの楽曲が多かったですね。

あらゆる“かっこいい”音楽を取り入れる

柳瀬 この11月に『国道16号線』という本を出したんですが、国道16号の沿線エリアは歴史的に外国からどんどん人がやってきて、あらゆる文化がミックスしていく場所なんですよね。

国道16号線』(柳瀬博一著、新潮社)

横山 そうですね。横浜も横須賀もまさにそう。

柳瀬 『NOW』の曲もそうですが、横山さんが作る音楽は本当にいろいろなものがいろいろな形で入ってきていますよね。あらゆるジャンルがあるというか、ジャンル分けがないというか。

横山 そのとおりなんですよ。

柳瀬 ブルース、ロックンロール、ソウル、ファンク、歌謡曲、果ては民謡的な部分までもが高低差なく交じり合っています。そこがずっと不思議な感じがしていました。