また同日、注目された妹の金与正(キム・ヨジョン)氏は、党中央政治局員候補から外されてしまった。この人事は、金正恩氏の本意ではなかったはずで、ここにも正恩氏の権力低下が見て取れる。

 父親の金正日総書記は、妹の敬姫(ギョンヒ)氏を、党軽工業部長というお飾りのポストに就け、妹婿の張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長と二人三脚で、政権を運営してきた。ところが金正恩氏の場合、妹の与正氏に直接、自分を補佐させている。崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長の次男である妹婿は一切、表舞台に立たせていないのだ。

 この世で信じられるのは自分の妹だけとは、何とも哀しき性(さが)である。だがその妹も今回、降格させざるを得なくなった。与正氏の降格は、2019年2月にハノイで開いた第2回米朝首脳会談の決裂の責任を取らされて以来、2度目のことだ。

金正恩の空疎な演説

 今回の第8回朝鮮労働党大会の初日、金正恩委員長が9時間にもわたって、党中央委員会活動総括報告(以下、報告)を行った。9時間の演説というのは、尋常でない。スピーカーの金正恩氏も大変だが、聞いている出席者たちも、さぞかし苦役だったに違いない。壇上の正恩氏が一息つくたびに、出席者たちは一糸乱れぬ大仰な拍手を送らねばならないからだ。つい居眠りでもしようものなら、即刻、会場から教化所送りになってしまう。実際、過去にはそのような幹部がいたと聞く。

 今回の報告は、第7回朝鮮労働党大会で決議した5カ年計画の総括であると同時に、今後の内政と外交の指針を述べたものだ。1月9日に朝鮮中央通信がその要旨を報じたが、A4用紙で24枚にも上る膨大なものだった。

 私はその全文に目を通したが、やはり「空疎」のひと言に尽きた。社会主義国には、「文書屋」とでも呼ぶべき一群の人たちがいて、金正恩氏や朝鮮労働党の偉大性を、修辞法を駆使して書き連ねてくれる。その点、北朝鮮は「金正恩教」に支配された宗教国家と見るべきだろう。だから金正恩氏の肩書きが変遷しても、変わらないのは「3代目教祖様」であることだ。