オンライン形式で開催された「APEC 2020」に出席した中国の習近平国家主席(資料写真、2020年11月19日、写真:ロイター/アフロ)

(吉田 典史:ジャーナリスト)

 中国の覇権的な拡張主義がアメリカ、日本やフィリピン、インド、オーストラリア、台湾などと激しい摩擦を繰り返している。北大西洋条約機構(NATO)もその行動を問題視する。2020年11月には、来日した中国の王毅国務委員兼外相が、沖縄県・尖閣諸島を自国領土とみなした発言を繰り返し、物議を醸した。

 中国国内における民主化運動への抑圧も各国から批判を浴びている。政府の圧力が極めて露骨な形で見えるのは、香港だ。2020年6月、香港での反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法(国家安全法)」が、中国の全国人民代表大会常務委員会で可決・成立した。12月2日には、違法集会を扇動した罪などに問われた民主活動家の周庭氏らに、香港の裁判所が実刑判決を言いわたした。

 このような動きに、数年前から抗議活動をする日本の左翼活動家がいる。

 2020年6月21日には、新宿に集まり「香港に自由を! 連帯行動」と謳った抗議デモを行った。APFS労働組合(注)、ATTAC首都圏、ジグザグ会、LACC(反資本主義左翼講座)、NO-VOX Japanといった団体である。

 日本の左翼活動家は、戦後長らく基本的に中国政府に親和的であった。例えば米ソ冷戦時代、アメリカなど自由主義陣営の動きには反対を表明するが、ソビエトや東欧諸国、中国や北朝鮮、キューバの圧政や粛清、人権抑圧に抗議することは少なかったのではないか。その意味で、左翼活動家の最近の中国政府への抗議は注目に値する。その1人である、APFS労働組合(東京都新宿区)執行委員長の山口智之氏に取材を試みた。

(注)APFS労働組合
 母体は、外国人支援団体の特定非営利活動法人「ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY(略称:APFS)」。1987年に設立された団体で、外国人からの相談や人権擁護の提言、それに関する啓蒙活動を続ける。組合員は現在約60人。約9割は外国人で、平均年齢は30代前半。国籍はミャンマーが最も多く、7割ほど。それにパキスタンやインド、エチオピアなどが続く。同労組は、個人でも加盟することができる。2007年の結成以来、日本労働組合総連合会(連合)、全国労働組合総連合(全労連)、全国労働組合連絡協議会(全労協)といったいわゆる3大労組には参加していない。外国人労働者の支援に特化し、労組としては独自路線を歩んでいる。

組合本部で団結するAPFS労組の組合員の写真