(福島 香織:ジャーナリスト)
新型コロナウイルスワクチンの接種が英国でいよいよ始まった。米ファイザーと独ビオンテックの開発したワクチンで、最初の接種者は90歳の女性だった。アメリカでも年内に接種が開始される見通しだという。ロシアでも「スプートニクV」の大規模接種が始まっており、中国シノバック・バイオテック製ワクチンもインドネシアでの大規模接種にむけて第1便の120万回分が到着したことが報じられている。
ワクチン接種が始まったことは、コロナ禍にあえぐ各国にとってとりあえず朗報ではあるが、やはり気になるのは、世界のコロナワクチン市場をどこの国が制するか、ということだろう。なぜならコロナをワクチンによって制した国が、ポストコロナの国際社会のルールメーカーになる可能性があるとみられているからだ。
気になるのは、やはり中国だ。中国のシノファーム傘下のシノバック・バイオテックなどが開発する不活化ワクチンは、マイナス70度以下という厳しい温度管理が必要なファイザー製などと違い、2~8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい。しかも年内に6億回分のワクチンを承認する予定であり、その流通性と量産で世界の途上国市場を圧倒しそうな勢いだ。
だが世界は、本当に中国製ワクチンに依存してよいのだろうか。
年内に6億回分のワクチンを市場に供給
中国の王毅外相は、習近平国家主席の名代として出席した12月3日の新型コロナ対応の特別国連総会の場で、「中国が新型コロナワクチンを積極的に途上国に提供し、主要な大国としての影響力を発揮する」と強調した。中国は年内に6億回分の新型コロナワクチンを市場に供給することを12月4日に当局者が明らかにしている。要は、中国のワクチン外交宣言である。
中国の孫春蘭副首相は12月2日に北京の新型コロナウイルスワクチン研究開発生準備工作の会合の場で、今年(2020年)中に空港や港湾の職員および第一線の監督管理人員などハイリスクに分類される職業から緊急使用を認めていく、としている。軍や医療関係者にはすでに投与が始まっている。