米国・ニューヨーク市マンハッタンのウォール街(Pixabay)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国人民大学国際関係学院副院長で、貨幣研究所の研究員でもある著名学者、翟東昇教授の11月28日の講演が、中国人と在米華人のSNS上で炎上している。

 炎上は12月7日に米FOXニュースの名物キャスター、タッカー・カールソンが約7分の番組にして取り上げたことから始まった。それをトランプ大統領がバイデン攻撃のネタとしてツイッターで拡散したことで、一気に燃え広がった。

 炎上のポイントは、翟教授が「米国のエスタブリッシュメント(ウォール街を中心とした体制派エリート層)やディープステート(影の政府)と中国共産党中央とのコネクションが数十年前から続いており、『ウォール街の狼たち』は中国共産党の老朋友(古い友人)である」ということをまるで自慢するように吹聴したことだった。

 私たちのように中国情報や国際ニュースを長く扱っている人間からすれば、別に目新しいことを言っているわけではない。だが、普通の中国人からすれば、中国共産党政権と米政権が古くからの親友で、ウォール街はいつも中国の味方をしてくれていた、と言われると、それは炎上するだろう。

 では、なぜ翟教授はこのタイミングで中国ネット、あるいは在米華人を炎上させる必要があったのか? そんな情報は秘匿しておく方が、中国共産党政権にとってもいいに決まっている。とすると、翟教授の暴露は、単にうっかり口走ったというだけなのか? とついつい深読みしてしまうのだ。