臨津江に架けられ韓国と北朝鮮をつなぐ鉄道橋「自由の橋」(写真:Penta Press/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 12月中旬、米国議会の人権派の最有力議員が、韓国の政府と議会への強い抗議を表明した。民主化を促す北朝鮮へのビラ散布を禁止し、処罰まで課す措置を決めたことに対する抗議である。

 同議員は、北朝鮮の民主化促進運動を禁じる文在寅政権の措置は、国連の人権尊重の条約に違反し、北朝鮮の金正恩政権の苛酷な弾圧を認めることにもなると厳しく非難した。米国議会のこうした動きは、バイデン新政権の対韓国政策にも影響を及ぼすとみられる。

北朝鮮におもねる文政権

 米国議会下院のクリス・スミス議員(共和党・ニュージャージー州選出)は12月12日、「韓国の政府と与党は北朝鮮の民主化を促すビラの散布を違法とする法的手続きをとろうとしているが、この措置は人間の基本的な自由の権利を蹂躙し、韓国の憲法や国連主体の国際人権規範にも違反する」という抗議と警告の声明を発表した。

 韓国の国会では文在寅政権を支える与党の「共に民主党」が中心となり、「ビラ禁止法案」を推進し、12月14日の本会議で可決した。最大野党の「国民の力」は“表現の自由”を制限するとしてビラ禁止に反対してきたが、国会で圧倒的多数を占める「共に民主党」などが採決を強行した。ビラ禁止法では、軍事境界線一帯でビラの散布などを行った場合、3年以下の懲役などの罪に問われることになる。