(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、今年4月の総選挙で圧倒的勝利を収めて以降、独裁体制を強めている。
コロナ禍の下で実施された総選挙では、文在寅氏のそれまでの国政遂行の失敗が問題にされるはことなく、新型コロナの抑制に成功したという実績で与党が大勝した。この勝利によって与党の慢心が強まった。国会において、国益を無視した“左翼政権”が進める独善的な法案や政策を強行採決するようになったのだ。
ところがここへきて、そのツケが回ってきた。文在寅政権に逆風が吹き始めたのだ。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長をトップに戴く韓国・検察庁による政界の不正に関する捜査が大統領周辺にまで及び始めると、状況を危惧した秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官は、尹総長を懲戒し、解任することによって文在寅大統領と政権を守ろうとし始めた。ところが、法を無視したその手法には国民世論もさすがに猛反発。国政支持率が政権発足以来、最低値に落ち込み始めたというわけだ。
それでも与党「共に民主党」は、これまでの国会で慣例となっているルールを守らない手法で、問題の多い法案を次々と国会に提出し、年内に成立させようと画策している。今後、与党のなりふり構わぬこうした動きはますます加速するであろう。そしてそれは文政権のレームダック化の進展を早めることになりかねない。文在寅政権は、まさに大きな曲がり角に直面していると言える。
文在寅氏の支持率、政権発足以来最低に
韓国の世論調査会社リアルメーターが11月30日から12月4日に実施した世論調査によれば、文在寅大統領の国政支持率が先週より6.4%下落して37.4%と、政権発足以来最低値を記録した。不支持率も5.2%上がって57.4%となり、その差は20%にまで拡大している。
今回、特に下落幅が大きかったのは、光州と全羅道で14.2%、大田・世宗・忠清道地域で13.7%などとなっており、文大統領のへの支持が高かった女性の支持も9.9%下落している。この支持率下落の最大の要因と指摘されているのは、尹錫悦検事総長に対する執拗な攻撃である。