福井県が「ふるさと納税型クラウドファンディング」を始めた同じ2018年4月、福井銀行と福井新聞社は、クラウドファンディングサイトのREADYFORと組んで、福井県に特化したクラウドファンディング「ミラカナ。」(https://readyfor.jp/pp/mirakana)をスタートさせた。福井県はクラウドファンディングの運営に、この3社の枠組みを利用している。

※「ミラカナ。」については別記事「大成功!資金不足の砂浜映画会を救ったクラファン」でもう少し詳しく紹介している。

福井市は支援先をまちづくり組織に絞る

 福井県の県庁所在地である福井市も、2020年に県とは別の「ふるさと納税型クラウドファンディング」を始めた。福井県との大きな違いは、市内各地区のまちづくり組織などに対象を絞っているところにある。

 そのベースにあるのが、1994年ごろから行っている、地域のまちづくりを支援する体制だ。市内に50弱ある公民館区ごとの「まちづくり組織」を基本的に支援対象としている。同市は公民館区が小学校の学区とほぼ一致していることもあり、地域活動が浸透しやすい規模の地域単位があったと言える。

 2019年には、地域の将来を考えた「地域ビジョン」の策定をまちづくり組織に依頼した。「1994年ごろから20年以上経って地域の状況も変わってきたこともあり、地域課題の解決といった視点を持った活動が増えてほしいという思いがありました」と、同市まち未来創造課の岩﨑一友主査はその目的を説明する。そして、地域ビジョンに基づいた活動に関しては補助金を手厚くするなどの制度改定も行った。

福井市まち未来創造課の岩﨑一友主査

 その延長として翌2020年から開始したのが、ふるさと納税型クラウドファンディングの「未来づくり創造ファンド」だ。「地域のための活動をしたいという思いがあっても、資金面がネックになってできない、という場合があります。そのときに、既存の補助金よりも制限の少ない形で支援し、より多くの活動を実現していただくために作った仕組みです」(同氏)。

 このような枠組みのため、支援対象はまちづくり組織(またはまちづくり組織が推薦した組織)に限られるし、「地域ビジョン」に沿ったものである必要がある。ただ、クラウドファンディングにかかる手数料は福井市が負担するので、プロジェクト実行者は集まった寄付金額がそっくりそのまま受け取れるという利点がある。

「返礼品なし」が意外と多い

 クラウドファンディングサイトは前述の、福井県に特化した「ミラカナ。」を利用していて、その中のプロジェクトという位置付けになっている(ミラカナ。のプロジェクト一覧では「寄附型」という表示があるので判別できる)。

 福井市は年間で5件程度のプロジェクトを想定していたようだが、初年度である今年は新型コロナの影響もあり次の2件にとどまった。
「岡の泉」の沢蟹と淡水紅マダラの生息環境を守る
地域住民と子どもたちが運営する駄菓子屋を作る

 このうち「岡の泉」は目標を達成して11月16日に終了した。「駄菓子屋」は12月4日まで募集中なので、興味があれば見てほしい。

「当初、寄付をする人が市内だけでは限りがあるから、返礼品もある程度見栄えのいいものを揃えて、市外の人にもアピールした方がいいと考えていました。ただ、現在までの状況を見ると、返礼品なしでの寄付をする人が思ったより多い印象があります。金額で半分ぐらい、人数では半数以上が返礼品なしを選んでいるようです」(岩﨑主査)。プロジェクトに共感し応援する、という趣旨からすれば、返礼品を期待しない人が多いということは望ましい形であると言えるだろう。

 もちろん、福井市内の人はふるさと納税の制度上返礼品を受け取れないので、市内の人は「返礼品なし」を選んでいる。逆に考えれば、「返礼品あり」が金額にして半分ぐらいになるほど、市外の人から寄付を呼び込んでいると考えることもできる。

「クラウドファンディングを行うことで、補助金を受けて行うものとは違う地域活動が生まれていくことを期待しています。外の人に向けて活動を見せるには、それなりに共感されるものである必要がありますから。自分たちで苦労してお金を集めて地域活動を行うというマインドが徐々に浸透していくといいなと思っています」(同氏)。