では、最終的にプロジェクト実行者に支払われるカネの主な出どころはどこか。寄付者が寄付先自治体以外に住んでいる場合は、その人が住んでいる自治体だ(したがってその自治体は本来なら徴収できる住民税が減る)。これはふるさと納税そのものの仕組みである。一方寄付者が寄付先自治体に住んでいる場合は、寄付先自治体がもともと徴収するはずだった住民税の一部がプロジェクトに使われることになる。

 このように、寄付者、プロジェクト実行者、寄付先自治体のそれぞれにメリットがある。ただ、仕組みが複雑なので、寄付者が「自分の金銭負担がない形でプロジェクトを応援できる」ということを納得できるか、という障壁があるだろう。いったんは寄付(支払)が必要だし、“税金の減額”なので払った寄付金が“戻ってきた”という実感が湧きにくい。クラウドファンディング、ふるさと納税のどちらの経験もないと、心理的な負担は大きく、なかなか寄付をしようとならないかもしれない。

3年間の実績は28件中26件成立

 福井県が「ふるさと納税型クラウドファンディング」に取り組み始めたのは2018年度。現在は全国のほかの自治体もだいぶ取り組み始めているが、その中でもかなり早い方だ。

 同県は「ふるさと納税による新事業創出」という言い方をしているが、「新しい取り組みということなら新事業といえる」として「地域課題の解決や地域活性化に関するもの」も含めている。また、起業や新分野の事業展開の場合は、初期投資費用を対象にして20万円までの上乗せ支給を行うこともあるという。

 これまで実施した事業は2018年度6件、2019年度11件、2020年度11件の計28件。このうち26件、9割超が目標額を達成(クラウドファンディングが成立)するという、なかなか良好な実績をあげている。

福井県の「ふるさと納税による新事業創出」のプロジェクトを一覧するクラウドファンディングサイト(https://readyfor.jp/pp/furusato_fukui

 具体的には以下のようなものがある。
・伝統工芸品の職人たちを集めた交流イベントを開催
・越前焼技術で作った文字盤の腕時計を開発
・ゲストハウスに隣接する土蔵を改修して語り合いの場所を作る
・福井県民がみんなで歌える歌を広めるために子どもたち向けの教室を開催