そして日韓関係の改善のため、最近韓国側から再三アプローチがある文在寅・菅共同宣言に言及した。

「1998年に金大中(キム・デジュン)・小渕共同宣言をしたように文在寅・菅共同宣言が出てこないだろうか。今後10年、20年、望ましい韓日関係の礎石となり北東アジアの平和・安定に寄与する土台となる宣言が出てくることを望む」

 日韓関係に突破口を開くことは李代表には政治的な機会である。与党の大統領候補の中で李代表ほど日本に精通し、人脈を持つ人はいない。日韓関係をうまく処理すれば李代表の政治的立場は上がるだろう。朴国家情報院長、金韓日議連会長が日本を訪問し、文・菅共同宣言を提案している状況に乗り遅れないよう、敢えて日本の政財界要人の前で主張したのであろう。

 韓国から、にわかに日本に対するアプローチが始まっている。

 共に民主党の金太年(キム・テニョン)院内代表も「韓日首脳会談の早期開催は望ましい」などと発言。「われわれは日本が徴用問題に対する司法の判決を尊重し、誠意ある解決策を講じることを期待している」と徴用工問題について従来の態度を堅持する姿勢を見せながらも、「新型コロナにつかれた全世界の人々をいやす東京五輪になるよう期待する」などと語っている。

外交部長官が関与していなかった朴智元氏の発言

 こうした外交スタンスの急展開は、正式な外交ルートとは別のルートから発せられているものばかりだということに日本側は留意する必要がある。

 康京和外交部長官は10日、あるニュース番組のインタビューに応じ、朴智元国家情報院長の訪日に関連して「外交部としては十分に協議したという状況ではない」とし、朴院長の訪日は知っていたが、「行く事実や行ってからの発言については外交部として公開的に評価する位置にはない」と述べた。

 もちろん、本来このような日韓間の重要な外交交渉を行うのは外交部である。しかし、日本側に「文・菅共同宣言」を働きかけることについては、文在寅氏の側近は了解していても、康長官や外交部は完全に蚊帳の外だったようだ。