昨年11月4日、バンコクで開催されたASEAN+3首脳会談の際の安倍晋三首相(当時)と文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 現時点では、まだトランプ大統領が米大統領選での敗北を認めていないが、バイデン氏が次の大統領になる可能性が高くなった。大統領が替われば、米国の東アジア戦略も大きく転換するだろう。

「バイデン大統領」は日韓関係改善を求める可能性大

 バイデン氏が米大統領となれば、北朝鮮の核・ミサイル開発や人権蹂躙、中国の海洋進出・技術覇権主義・人権問題などへの対応にあたり、日米韓の連携および日米豪印のクアッドに韓国も加えた協力を強化するため、その前提として史上最悪と言われる日韓関係の打開を求め、仲介に乗り出すことが予想される。

 トランプ大統領は、国際政治でのリーダーシップを放棄したため、世界には「力の空白」ができた。そこに入り込んできたのが中国だった。また、トランプ氏は金正恩氏の意図を読み切らずに首脳会談を行い、北朝鮮への非核化圧力を弱めてしまった。

 バイデン氏はこのような状況が決して米国の利益にならないと考えている。他の民主主義国とともに、中国・ロシア・北朝鮮などに対抗して国際政治秩序を回復しなければならず、そのためにも日米韓の協力は中核的な役割を担うべきと考えているはずである。

 韓国は現在、「バイデン時代」の東アジア戦略を必死に探ろうとしている。韓国主要メディアは、副大統領時代のバイデン氏の日韓への対応、大統領選挙運動中の言動、バイデン氏に近い外交アドバイザーと言われる人々の考え方について分析を進めているが、そこで明らかになってきたのは、米国が日韓関係の改善を求めてくるということだ。その場合には、韓国の対応ばかりでなく日本の対応にも少なからぬ影響を及ぼしかねない。バイデン氏の出方、今後の展望、日本としてこれにいかに対応すべきか考えてみたい。