ベトナムに対する米国の民主党と共和党のスタンスは大きく異なる。ベトナム戦争を始めたのはケネディ大統領であり、それを拡大させたのはジョンソン大統領である。両人共に民主党。一方、ベトナム戦争を終結させたのは共和党のニクソン大統領である。

 1995年に米国とベトナムとの国交を回復させたのは民主党のクリントン大統領。また2016年には民主党のオバマ大統領がベトナムを訪れている。その時、オバマ大統領はハノイの庶民的な店でベトナム風つけ麺であるブンチャーを食べた。それ以来この店は「オバマ・ブンチャー」と呼ばれて、ハノイの観光名所になっている。

 民主党と共和党ではベトナムに対して温度差がある。民主党は国際政治に理念を持ち込んで、世界に干渉したがる。1960年代に民主党政権は、ベトナムが共産化すれば東南アジア全体が共産化するとの思い込みで(ドミノ理論)、ベトナム戦争を始めた。しかしベトナムが共産化しても東南アジアに共産主義が広がることはなかった。共和党のニクソン大統領やその懐刀であったキッシンジャー補佐官の方が現実を冷静に分析していた。

 民主党政権は、自身の価値観を世界に押し付けたがる。またクリントン大統領やオバマ大統領が訪越したように、世界との関係を強化したいと考える。それに対して、共和党は概して国際社会に冷淡だ。

 以上を踏まえて、現在、ベトナムはバイデン新政権の出方を注視している。

 トランプ政権は中国との対立において、同盟国と協力することはなかった。一人相撲に終始したと言って良い。貿易に制裁を課すなどの派手なパフォーマンスが多かったために世界の耳目を集めたが、戦略的な観点から見ると意外に効果はなかった。

 南シナ海の問題においても、中国が嫌がるのは「航行の自由作戦」ではなく、米軍が空母を頻繁にベトナム南東部のカムラン湾に立ち寄らせて、そこを事実上の母港にしてしまうことだった。中国は米国の軍隊がベトナムと密接な関係を持つことを強く警戒している。だがトランプ政権はそこまで踏み込まなかった。

 それは米国とベトナムの関係は改善されたと言っても、今ひとつしっくりいっていないからだ。ベトナム戦争を記憶している人が、米国内にまだ大勢いる。勝利したこともあってベトナム人の対米感情は悪くないが、米国にはわだかまりがある。