ウンコ移植、その歴史と効果

 腸内細菌の乱れが重度と考えられる場合には、プロバイオティクスやプレバイオティクスもいいけれども、地道にコツコツやる必要があります。時間がかかるし管理も難しいので、もういっそのこと健康な人の便を患者の腸に移植すれば、健康な腸内細菌が定着するだろう、という発想です。

イラスト:近藤慎太郎
イラスト:近藤慎太郎

「他人の便を移植するなんてどこのマッドサイエンティストが考えたんだ?」と思う人もいるかもしれません。しかし、他者の便を摂取するというのは、実は自然界では時々見られる現象です。

 たとえばコアラの母親は、自分の便を子どもに食べさせる習性があります。母親の便を食べることを通じて、子どものコアラはユーカリの味を覚え、ユーカリの消化に必要な腸内細菌を自分の腸に定着させるのです(3)。

 人間でも同様です。紀元4世紀ごろ、中国では食中毒患者に対して、健康な人の便を投与する治療が行われていました。

 つまり便移植は、独創的な研究者が近年になって思いついた奇抜な治療法ということではなく、実は発想のタネには長い歴史があり、脈々と受け継がれてきたものなのです。

 実際に、便移植は成果をあげつつあります。