兵隊を増やすか、兵站を増やすか、両方か

 前者のプロバイオティクスは、善玉菌である乳酸菌、ビフィズス菌を含む薬や食品を摂取することです。悪玉菌との陣取り合戦にたとえれば、「兵隊」を直接補充することに相当します。

 後者のプレバイオティクスは、善玉菌の栄養源である食物繊維やオリゴ糖を摂取することです。これは、兵隊に食料を与え、体力が落ちないように管理すること、つまり「兵站」に相当します。

 食物繊維は、野菜(らっきょう、パセリ、ゴボウ、大根、オクラ)、果物(アボカド、グァバ、ラズベリー)、イモ、海藻、キノコなどに多く含まれます。また、オリゴ糖は野菜(玉ねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガス)、果物(バナナ)、大豆などに多く含まれます。上記の食材をしっかり摂らないと、善玉菌が枯渇、餓死しかねません。

 プロバイオティクスとプレバイオティクス、どちらがより有用なのかははっきりしませんが、可能であれば両方取り入れるのがベストでしょう。ただし、一時期だけやればいいというものでもないので、自分自身の生活習慣に合わせて、無理のない範囲で地道に続けていくことが大切です。

 ここで一つ、注意点があります。いくら腸内細菌が様々な病気に関与しているとはいえ、たとえば喘息やうつ病で困っているときに、プロバイオティクスとプレバイオティクスだけで何とか完治させようと思っても、やはりそれは難しいでしょう。まずは医学的に確立されたスタンダードな治療を優先してください。

 そして余裕があれば、日常生活の中でプロバイオティクスとプレバイオティクスを並行して実践し、ベースの状態を少しでも良くしておくという意識で良いと思います。

 以上のように、「腸内細菌は様々な疾患のトリガーとして無視はできないけれども、疾患の治療として最優先課題ではない」というのが、今までの大原則でした。ところが、です。近年、スタンダードな治療で改善しない難治性の疾患に対して、腸内細菌だけをターゲットにした治療法が脚光を浴びています。それが、「糞便微生物移植(fecal microbiota transplantation 以下、便移植)」です。

 一般の人にとっては、まだまだ聞きなれない名前だと思いますが、文字通りの治療法です。つまり、あたかも輸血をするかのように、他人の便をうすめて溶液にし、自分の腸に移植するのです。