便移植を提示される日は来るか?

 変異したクロストリジウム・ディフィシルという細菌による重度の下痢の患者に対し、健康な人の便を移植したところ、抗生剤による従来の治療よりも、症状を明らかに改善させたと報告されています(4)。それ以外にも、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎などでも、便移植が有効だったという報告は多数あります。

 前述した通り、腸内細菌の乱れが関与する病気はたくさんあります。それらに対する有効な治療法として、便移植が拡がっていく可能性は十分あるのです。自分が何かの病気で受診した時に、治療法の選択肢として便移植を提示される日がくるかもしれません。心の準備だけはしておくようにしましょう。

【参考文献】

(1) Souradet Y Shaw et al. Association between the use of antibiotics in the first year of life and pediatric inflammatory bowel disease. Am J Gastroenterol. 2010;105:2687-92.

(2)Seki E et al. TLR4 enhances TGF-beta signaling and hepatic fibrosis. Nat Med. 2007;13:1324-32.

(3) 水野、他「糞便微生物移植の現状と未来」日本内科学会雑誌107;2176-82:2018

(4) van Nood E, et al : Duodenal infusion of donor feces for recurrent Clostridium difficile. N Engl J Med 368 :407-15;2013.

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