秋美愛法務部長官の子息の兵役不正事件は大ダメージ
文在寅政権の支持率は40%台半ばに落ち、不支持率がこれを上回る状態が続いている。文在寅政権を支持する人は、「政権発足後3年たった今も40%半ばの支持があることは尊重しなければならない」と言う。それも一つの真理であるが、同時に韓国の世論調査は、文政権不支持が多い年代の人が電話に出ると回答を求めないなど、信頼性に欠けるとの評価があるのも事実である。
最近の支持率低下の顕著な原因となっているのは、法務部長官・秋美愛(チュ・ミエ)氏の息子による軍休暇からの未復帰を「休暇」としてゴリ押しした行為に、当時与党代表だった秋美愛氏が介入した事件や、韓国人公務員が北方限界線の北側水域で射殺され焼却された事件だ。後者の事件では、文政権が国民の人命保護を放棄し、北朝鮮の行為を不問に付す態度をとっていることへの反発が強い。これらの事件をきっかけに、従来の支持基盤であった30~40代の女性や20~30代の男性の支持が離れているのだ。
どちらの事件も、韓国国民の感情を刺激するものだが、現在のところ文政権に対する抗議運動がヒートアップしているといった情報は聞こえてこない。朴槿恵(パク・クネ)前大統領に対しては弾劾の動きなどが起きたのに、なぜ文大統領に対しては韓国の世論はおとなしいのだろうか。
結論からいえば、文政権に対する抗議運動の芽は実は広がっている。しかし、弾劾運動が起きることはないだろう。仮にそれを言い出す人がいたとしても、文政権はすでに立法府も司法府も抑え込んでおり、弾劾される可能性は極めて少ない。
さらに文政権は、自分たちに対する抗議運動そのものも強硬手段で封鎖しており、大規模な運動に発展する可能性は低い状況にある。
しかし、だからといって韓国の世論が文政権に満足しているわけではない。
抗議活動を強引に封じ込める文政権
ハングルの日である10月9日、光化門広場、鍾閣、徳寿宮などソウル都心で37の集会開催の届け出がなされていた。その大部分は「文在寅政権の不正腐敗糾弾集会」「政治防疫中断要求集会」といった反文在寅集会だった。
集会の開催自体は裁判所が許可していたが、文政権はその開催を露骨に阻止しようとした。
ハングルを制定した世宗大王像が置かれている光化門広場の外郭道路周辺には機動隊バスが壁を作り、広場の周辺には鉄製のフェンスが設置された。光化門広場は青瓦台に近く、官庁の建物が集中する韓国政治・行政の中心地。朴槿恵弾劾デモもここで行われた象徴的な場所だ。
そのため当局の警戒は厳重だった。当日は、広場に入るすべての道路は鉄製のフェンスやビニールテープによる禁止線で車の通行は阻止され、通行する市民は複数回にわたって身分証の提示を要求されるような始末だった。ソウル郊外から都心に向かう車に対しては、57カ所の検問所を設けた。
これに動員された警察力は実に警察官1万2000人、鉄製のフェンス1万3000個、機動隊バス500台という。