もちろん、これに対する米国の反応は厳しい。かつてホワイトハウス安全保障会議で補佐官を務めた、戦略問題研究所上席副所長のマイケル・グリーン氏は、「韓国大統領が国連で米国議会や政府の立場とこれほど一致しない演説をするのをほぼ見たことがない」「平和を宣布することで、そのように(朝鮮半島の平和実現)できるわけではない」と強い口調で批判している。
北朝鮮の軍事パレードより、金正恩委員長の甘言に着目
文大統領が恋焦がれる北朝鮮は、10月10日の朝鮮労働党創建75周年の閲兵式(軍事パレード)で、米国本土を射程に収める新型の大陸間弾道弾(ICBM)を公開した。これは片側11輪の輸送起立発射機(TEL)に載せられたもので、従来の「火星15」の片側9輪より、全長が長い。弾頭部分の直径も大きくなって、複数の弾頭を搭載できる多弾頭型かと注目されている。さらに、「北極星4」と書かれた新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)も公開した。
北朝鮮は前回2年前の軍事パレード時から着々とミサイル開発を継続してきたものであり、今回は米国を標的にしたものである。
北朝鮮の核ミサイル開発はこれまでも公然の秘密であった。そうした中で文大統領は、非核化を前提としない「終戦宣言」を提案したのである。はっきり言うが、北朝鮮は決して平和を望んでいない。つまり、韓国の言う「朝鮮半島の平和」は幻の平和に過ぎないのだ。
文在寅政権の北への片思いは変わらない。こうしたミサイル技術の進化を見せつけられても、文政権の終戦宣言に対する姿勢は変化しないだろう。
9月22日に、韓国人の公務員が、海上で北朝鮮により射殺され、遺体を焼却された時も、北朝鮮の蛮行よりも、その後に金正恩委員長が述べた「南北の間の関係に面白くない作用がある事件が我々の水域で発生したことに対し貴側に申し訳なく思う」と述べたことに注目していたほどだ。さらに10月8日には、文大統領は再び「終戦宣言こそが朝鮮半島平和の開始」と繰り返したのである。
ここまでいくと、文在寅政権に北朝鮮を批判的に見ることなど、到底期待できないのが分かる。