(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
「私は“立法府の長”」
現職の内閣総理大臣が国会答弁でそう言い放ったことがある。先週、在任日数が憲政史上最高となった途端に辞任を表明した安倍晋三である。
2016年5月16日のことだった。当時の民進党議員の追及に嫌気がさしたのか、高飛車にもこう言い放っている。
安倍「議会の運営について少し勉強していただいたほうがいい。議会については、私は“立法府の長”」
しかも、その翌日も同じ趣旨の発言をしている。
言わずもがなだが、日本において内閣総理大臣は行政府の長であって、立法府の長は衆参両院議長にあたる。義務教育の教科書にも載っているはずだ。
修正された議事録
さすがにこの発言は、後日、議事録では修正された。だが、こんな記録が残っている。
同年5月23日の参院決算委員会。民進党(当時)の足立信也議員との質疑応答。
質疑「先週二度にわたって、立法府の長でありますと、私は。この委員会の質疑で、立法府の長である総理に私は質問をしなきゃいけないんでしょうか」
安倍「それは行政府の長ということであります」
質疑「じゃ、先週はちょっとエキサイトして間違ったということでよろしいんですね」
安倍「行政府の長、何回もいろいろと委員会運営について質問されたことがございますが、基本的には大体、行政府の長としてお答えをしているわけでありますが、もしかしたら言い間違えたかもしれません」
エキサイトや言い間違えで済まされる話ではなかった。なぜなら、第1次政権時代にも、同じことをやらかしているからだ。