すっかり、その名前を忘れてしまっている人も多いのではないか。北海道日本ハムファイターズ・清宮幸太郎内野手のことである。
リトルリーグ時代に世界選手権で優勝し、当時の米メディアから名付けられた異名は「和製ベーブ・ルース」。名門・早稲田実業では主将兼主砲の座に君臨し、史上最多となる高校通算111本塁打をマークした。こうした輝かしい経歴を引っさげ、2017年のドラフトでは高校生として史上最多の7球団競合となり、交渉権をつかんだ日本ハムへ入団を果たした。
ところが、プロ入り後はブレイクの兆しがまるで見えて来ない。今季はプロ3年目にして初の開幕一軍入りを果たしたものの、ここまで31試合の出場で打率1割6分3厘、3本塁打、7打点(12日現在)とパッとしない成績のまま沈んでいる。
謎の「代走」起用
こんな体たらくで、よく一軍に残れるなと思う。しかも12日の千葉ロッテマリーンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)では“珍起用”で一部から話題を集めた。この日はスタメンを外れ、終盤から途中出場。9回の第5打席でこの日6打点目となる左前適時打を放って出塁した主砲・中田翔内野手に代わり「代走」として起用されたのだ。
先月8日のオリックス・バファローズ戦(京セラドーム)で巨体を揺らしながら、昨季プロ唯一の盗塁死を記録させられた若月健也捕手から意地のプロ初盗塁を決め「(プロでは)盗塁はできないと思っていたので良かった」とコメントしていた。とはいえ、プロ通算盗塁数はわずか「1」の選手である。
「足のスペシャリスト」とは決して言いきれない清宮が一塁走者として登場すると、敵地スタンドもさわめいた。ネット上に書き込まれたコメントでも「?」の文字が数多く散見され、その中には「そこまでして使わなきゃいけないのか?」と揶揄する声もあった。
ベンチとしては大差がついた段階で主砲の中田をベンチに下げて休養させる意味合いがあったことに加え、もしかすると足のスペシャリストでない清宮をあえて門外漢の代走としてグラウンドに立たせるという屈辱的な“見せしめ起用”によって、本人に発奮を促す意味合いもあったのかもしれない。栗山英樹監督はプロ初盗塁を決めた際に「50盗塁を目指して欲しい」と冗談めかしてハッパをかけていたが、まさか本気ではあるまい。いずれにせよタクトをふるう指揮官も清宮の扱いには相当苦慮しているようだ。