イージス・システムに替わりうる
MDシステムとその限界

 ではイージス・イステムに替わり、どのようなMDシステムが今後有望かと言えば、指向性エネルギー兵器(DEW)と呼ばれる、高出力レーザー、レールガン、マイクロウェーブ兵器がある。

 その特徴は光の速度やこれまでよりもはるかに高速で破壊エネルギーを指向でき命中率が上がることと、砲弾の単価が数十ドルから数千ドル程度と極めて安価になる点である。

 砲弾の単価という点で言えば、1発30億から40億円もするSM-3ブロックⅡAミサイルを複数発射して、1発5億から6億ドルのミサイルを撃墜するとすれば、イージス・システムは極めて費用対効果は低いと言わざるを得ない。

 そのうえ機動型弾頭には命中もしないとなれば、そのような兵器体系は開発に着手していても途中で破棄し、他のシステムの研究開発計画などに切り替えるのが賢明であろう。

 現に、年々高騰する最新兵器の研究開発、調達予算に悩まされている米軍では、統合レベルで将来戦様相をシミュレーションし、どのような装備体系が最も望ましいかを開発前の任務分析段階から陸海空の枠を超えて総合的に検討するという、ミッション・エンジニアリングという手法をとろうとしている。

 新たな戦い方が有効と評価されれば、従来の経緯にかかわらず、古い戦い方のための開発途上の兵器システムも破棄し切り替えるという方針を追求している。

 このような手法をイージス・アショアに適用すれば、将来戦での有効性が保証されないシステムは思い切って中止するという今回の決定は賢明であったと言える。

 ただしDEWも万能ではない。レーザーは大気中の減衰のため遠距離に届かず、マイクロウェーブ兵器には核弾頭などの電磁シールド対策、レールガンには砲身の腐食と超加速、目標への誘導という課題があり、いずれも実用化には時間がかかり、かつ100%の撃墜は期待できない。

 既存のミサイルシステムも含めた総合ミサイル防空能力で対処することになるとみられる。

 しかしそれでも、米ドナルド・トランプ政権の昨年の『ミサイル防衛見直し』報告でも明言されているように、米国のMDシステムは、100発以上のミサイルを同時発射できる中露の核ミサイル攻撃に備えるためのものではない。

 北朝鮮、イランなどの局地的核脅威に備えるためのものである。

 このように、中露の核脅威には核抑止力で対処するのが、米国の変わらない方針である。今後とも、MDの迎撃能力にも核抑止力にも限界があると言える。