総合的結論:
核の引き金保持と保有すべき戦力システム

 総合的に戦略的な抑止の信頼性、残存報復力、費用対効果などからみて、小型で巨大な破壊力がありコントロールも秘匿も容易な核兵器は、他の通常兵器、生物化学兵器に比べても最も効果的な兵器システムであると言える。

 もちろん核兵器だけですべての脅威を抑止し、あるいは対処できるわけではない。

 投射システムは通常戦力と一体であり、相応の到達力、突破力、命中破壊力などが伴わなければならない。

 敵基地攻撃能力は自立的防衛力と信頼できる抑止力のためには不可欠である。

 ただし、その弾頭として核弾頭を搭載しなければ十分にその能力を発揮できないことは、上述したとおりである。

 また、ドイツが行っている平時には国内に米国の核弾頭を保管し訓練しておいて緊急時に米大統領の承認を得て核弾頭を譲り受け使用するという、核シェアリングは、核の引き金を米大統領の判断に全面委任しており、拡大抑止の信頼性向上にはならない。

 拡大抑止の信頼性を向上するとともに、米国の戦略核報復とのカップリングを確実に保証させる意味でも、核の引き金を日本自身が握らねばならない。

 この点は、日本の核保有に当たり最も重要な点であり、米欧間の核シェアリングのあり方をめぐり最も論争となった点である。

 欧州、特に独仏は独自核を望んだが、米国ジョン・F・ケネディ政権は欧州の要求を拒絶し米大統領が一手に核の引き金を握る、形だけの核シェアリングをドイツなどに押しつけた。

 これに反発したフランスはNATO(北大西洋条約機構)の軍事組織を脱退し独自核の開発保有に踏み切った。

 英国だけは英首相自ら独自の核の引き金を保持しつつ、米原潜と同じ型のSLBMを保有し米国の核作戦計画の一部に参加することで、真の意味での核共有を実現している。

 日本としては英国型を目指し、やむを得なければフランス型の独自核の保有に踏み切るべきである。

 四面環海の日本としてはSLBMを原潜に展開するのが最も望ましい。

 それが予算、技術などの制約で整備に時間を要するのであれば、安価で短期間で展開できる地下基地への移動式の機動型核弾頭ミサイルの展開、あるいは核弾頭搭載長距離スタンドオフ巡航ミサイルの装備化に踏み切るべきであろう。

(なお、核保有の必要性と可能性、その費用対効果が核抑止力、核恫喝対処という点でも、米国の戦略核との連動の保証という点でも、最も優れていることについての細部説明は、拙著『核拡散時代に日本が生き延びる道』(勉誠出版)を参照されたい)