「できる人」=「ショートスリーパー」?

 まず、第6回で解説した通り日本人の平均的な睡眠時間は7時間14分です。高齢になればなるほど睡眠時間は短くなることを考えると、働き盛りの人の場合は、7~8時間が平均としてよいでしょう。そうすると、もしそんな人が5時、6時に起きているとしたら、逆算して22時前後に床に就いていることになるでしょう。

 1日働いて、食事、入浴、ちょっとビールで晩酌・・・などしたら、もう寝なくてはいけません。

 そうなると、「ん?ちょっとイメージが違うな」と思われるのではないでしょうか。「できる人」のイメージは朝型かもしれませんが、それに加えて残業もこなし、遊びもスマートにこなし、自分の勉強もして、夜遅くに眠る──。要は睡眠時間の短い、「ショートスリーパー」が念頭にあるのではないでしょうか。

 結局、「できる人は朝型」というイメージの背後には、「24時間戦えますか?」の時代から脈々と受け継がれているスーパーマン礼賛の思想がある様に思います。

 ではスーパーマンは別として、小学生並みに22時に眠るとしても、朝型と夜型、どちらがビジネスパーソンとして望ましいのでしょうか?

 ここで興味深い資料をご紹介します。

早寝早起き朝ごはんで輝く君の未来』。これは、文部科学省が出している中高生用の普及啓発資料です(中高生向けと、指導者用の2種類があります)。この資料の中では様々な文献が紹介されていますが、

「朝型は夜型よりも成績が良い」(1)

「高校生において、就床時刻が遅く、睡眠時間の短い生徒ほど成績が悪い」(2)

 など、とにかく早寝早起きを「絶対的な正解」として勧めています。

 確かにこのような報告は枚挙にいとまがありません。成績だけでなく、「朝型の傾向が強いほどスポーツの競技パフォーマンスが向上につながった」(3)という報告もあります。

 ただし、ちょっと立ち止まって考えると、就寝時間の遅い子供ほど、こっそりゲームをしたり、LINEなどでチャットしたりしているのかもしれません。また、学校の後に、バイトや家族の世話をしなくてはならないなど、家庭環境の問題もありうるでしょう。成績の良否の原因を、睡眠だけに求めることはできません。

 スポーツに関しても、スポーツをしている子ほど疲労が蓄積していて早く眠っているという「逆相関」があるのかもしれません。早寝早起きをすれば、自動的に成績が良くなる(大人であれば仕事ができる)といったような、単純な図式ではないでしょう。