7月10日、新型コロナの感染状況について西村康稔担当大臣との会談後、記者会見した小池百合子都知事(写真:ロイター/アフロ)

(山田敏弘:国際ジャーナリスト)

 7月5日、東京都知事選が行われ、大方の予想通りに現職の小池百合子知事が再選を果たした。再選後、都庁の職員に「引き続き皆さんと共に、為すべきことに邁進していきたいと存じます」と語った。

 小池氏を巡っては、選挙戦が始まる前のタイミングで彼女の「嘘」にまみれた半生に迫ったノンフィクション『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が発売され、大変な話題になった。本は瞬く間にベストセラーとなり、人々の関心の高さがうかがえた。

 この本で特に注目されたのは小池氏の学歴詐称問題である。エジプトのカイロ大学を首席で卒業したと主張してきた彼女の学歴が虚偽なら、公職選挙法違反(虚偽事項公表罪)にも抵触するために看過できるものではなかった。

 筆者は2017年に『週刊ポスト』の取材でエジプトのカイロ大学を訪問し、関係者などに話を聞いて回った。その頃、小池氏の学歴問題などについて取材をしていたのは2017年に「小池百合子研究 父の業を背負いて」という記事を『新潮45』で書いていた石井妙子氏と、本格的に小池氏について取材を始める準備をしていた作家の黒木亮氏だけだったと言える。

 今回、『女帝』の発売を受けて筆者も『女性セブン』(小学館)で見解を記事にまとめている。そこで、その後に小池氏の学歴問題についての読者やメディアのさまざまな反応を受けて、この話を今一度、振り返り、総括してみたいと思う。

「首席で卒業」どころか「4年で卒業」でも“奇跡”

 そもそも小池氏が初めてカイロに渡ったのは、1971年のこと。大阪の関西学院大学の学生だった彼女は、エジプト留学を決意して中退。留学前にアラビア語は一切勉強しなかったという小池氏は、カイロではまず欧米系のカイロ・アメリカン大学に入学し、8カ月ほどをかけてアラビア語を集中的に勉強した。その後、アラブ圏で最高峰レベルと名高いカイロ大学に入学し、非常に高度なアラビア語能力が必要になる同大学を4年で卒業した。しかも、首席で、だ。

 もっとも、これは小池氏が一方的に主張してきた学歴である。『女帝』でも、黒木氏がいくつものメディアで発表している記事でも、事実はこの小池バージョンとは全く違うと指摘されている。