実は日本の輸出は増えていない

 今回、コロナ危機によって輸出が大幅に減少したが、実は日本の輸出はかなり前から減少傾向が続いている。月ごとの輸出金額を見ると、前年同月比でマイナスとなっているのは実は18カ月連続で、1年以上前から、ジワジワと輸出の減少が続いてきた。その意味ではコロナ危機はその動きを加速させただけと判断することもできる。

 日本の輸出が減少している理由は主に2つある。1つは好調だった世界経済がピークアウトし、全世界的に貿易が低調になっていること。もう1つは日本企業の競争力の低下である。

 過去10年の世界経済は米国の好景気に支えられてきたという面が大きい。旺盛な米国の個人消費を背景に、各国が米国市場に製品を販売することで世界経済が回っていた。だが米国の景気がピークアウトしつつあるタイミングで、米中貿易戦争が勃発し、両国の貿易が急激に冷え込んだ。

 日本が中国に部品を輸出し、中国メーカーがその部品を使って最終製品を製造して米国に輸出するケースも多いので、米中の貿易が停滞すると、中国向けの輸出も減ってしまう。一部の日本メーカーの業績が悪化しているのは、これが原因である。

 全世界的に貿易が停滞していても、日本メーカーのシェアが上がっていればその影響は緩和されるが、全世界の輸出シェアに占める日本の比率は近年、大きく低下している。アベノミクス以降、金額ベースでの輸出は増えたが、数量ベースでの輸出はほとんど増えていない。つまり、日本メーカーの業績は事実上、横ばいといってよい状況だ。ここで貿易が停滞すれば、当然、輸出は減っていくことになる。

貯蓄投資バランス論で考えると

 今後も貿易の停滞が続いた場合、輸出に依存する日本のような工業国は相対的に不利になる。付加価値の低い生活必需品を国内で製造するわけにはいかないので、輸入を減らすことも難しい。場合によっては、日本の貿易収支が慢性的に赤字になる可能性についても考慮しておく必要があるだろう。

 日本は海外の投資から得られる利子や配当に相当する所得収支が、貿易黒字の額を大きく上回っており、国際収支全体から見た場合、日本はもはや貿易ではなく投資でメシを食う国になっている。ちなみに2019年の経常収支は約20兆円の黒字だが、そのほとんどは所得収支となっており、貿易黒字はごくわずかである。したがって最終的なお金のやり取りを示す経常収支は当分の間、黒字を維持する可能性が高い。