新型コロナウイルス対策の長期化がほぼ確実になったことで、鉄道各社の業績懸念が高まっている。特に新幹線への依存度が高く、リニア中央新幹線の建設を行っているJR東海への影響は大きい。JR各社は民間企業とはいえ、もともとは国鉄であり、極めて公共性が高い。コロナ後の社会を見据えた上で、鉄道網をどう運営していくのか国民的な議論が必要だろう。(加谷 珪一:経済評論家)
GW期間中の新幹線利用者数は95%減
JR各社は2020年5月7日、ゴールデンウィーク(GW)期間中の鉄道利用状況を公表した。いつものGWであれば、通勤路線の利用が激減し、旅行や帰省などで長距離路線が混雑するというのが定番だったが、今年は緊急事態宣言の発令によって移動自粛が求められており、新幹線もガラガラという状況だった。
JR東日本のGW期間中の利用者数は、新幹線が前年比95%マイナス、在来線の特急列車の利用者数は同じく95%のマイナスだった。JR東海は新幹線がマイナス94%、在来線がマイナス96%、JR西日本は山陽新幹線がマイナス95%、在来線特急も95%のマイナスとなっており、各社とも総じて95%程度、利用者数が減少している。
政府が緊急事態宣言の延長を表明したことを受けて、JR各社はGW明け後も、本数を減らした形で新幹線を運行している。JR東海では「のぞみ」の運転本数を半分以下に、東海道新幹線全体としても3割程度、本数を削減した。JR西日本も3割ほど新幹線の本数を減らしており、これにともなって5月16日から1400名の乗務員や駅員などを一時帰休させている。
コロナウイルスを完全に封じ込めるには、厳しい措置の継続が必要というのが感染症専門家の一致した見方だが、足元では経営が成り立たなくなる企業も増えており、自粛解除に向けた動きも目立つようになっている。しかしながら、冬には再び感染が拡大すると予想する専門家は多く、当分の間、何らかの形で経済活動の抑制が続く可能性が高い。