コロナ危機の影響で日本の輸出が急激に減少している。一方、生活必需品を中心に最低限の輸入は維持しなければならないので、輸出が減っても輸入は大きく減らない。このため、輸出の減少は貿易赤字(最終的には経常赤字)を招きやすくなる。経常赤字そのものが経済に悪影響を及ぼすわけではないが、輸出主導型経済から脱却できていない日本の場合、経常収支の変化は各方面に大きな影響を与える可能性がある。(加谷 珪一:経済評論家)
輸出が減っても輸入はあまり減らない
財務省が発表した2020年5月の貿易統計は、輸出が4兆1848億円、輸入が5兆182億円、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は8334億円の赤字だった。3月の輸出は6兆3581億円、4月は5兆2060億円だったので、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに急激に輸出が減少している。
日本のように加工貿易を行っている国の場合、輸出が減れば、輸入も減少することが多い。製品の輸出が減ると、メーカーは原材料や部品の調達を控えるので、その分だけ輸入も減少する。しかしながら、日本は製品を製造する目的だけで輸入を行っているわけではなく、生活必需品を中心に低コストな消費財の輸入も行っている(今回のコロナ危機ではマスク不足が深刻となったが、マスクのような価格の安い製品はその典型といってよい)。