眠気覚ましとしてコーヒーや紅茶を飲む人も多いと思います。それらに含まれているカフェインは、睡眠誘発物質であるアデノシンの作用をブロックすることにより、覚醒をもたらします。
カフェインの効果は数時間持続するので、飲むタイミングにはくれぐれもご注意ください。外食した際、特にイタリアンやフレンチのディナーで、食後にコーヒーや紅茶を飲めば、深い満足感は得られるものの、入眠にとってはマイナスになるかもしれません。
タバコも、実は眠気を遠ざける働きがあります。ニコチンは「報酬系」と呼ばれる脳の神経回路に作用して、ドーパミン、アドレナリン、β-エンドルフィンの放出を促し、心地よさをもたらします。その一方で、アドレナリンにより交感神経系が刺激され、血圧を上昇させ、意識レベルは覚醒に傾くのです。実際に、喫煙者の睡眠は非喫煙者の睡眠に較べて、深い睡眠が少ないことが報告されています(2)。
また、皆さんも、いびきがひどく、就寝中に呼吸が一時的に止まる人を見たことがあると思います。そういう症状がある人は「睡眠時無呼吸症候群」という病気の可能性が非常に高く、タバコによって症状が悪化する可能性が報告されています(3)。
そして、寝タバコは火災の原因にもなりえるので絶対に避けるようにしましょう。
寝酒より睡眠導入剤の方が何倍も良い
アルコールはどうでしょうか?
「夜眠る前にお酒を飲むと、寝つきが良くなる」という経験は誰しもあると思います。
しかし、確かに寝つきは良くなるものの、実はアルコールは気道を狭くさせ、睡眠の質自体はむしろ落とします。途中で起きてしまったり、朝早すぎる時間に目が覚めて眠れなくなったりするのです(4)。
アルコールには利尿作用もあるので、排尿のためにも途中覚醒が増えてしまいます。ぼーっとした状態でトイレに移動することによって、転倒するリスクも上昇するので注意が必要です。
そして、アルコールがなにより問題になるのは、⼀時的に寝つきが良くなっても、それが習慣化されることによって、「お酒を飲まないと眠れない」という依存状態になってしまうことです。
また、同じ酒量では次第に効果が得られなくなっていくので、寝る前の一杯の量が徐々に増えていく・・・という負のスパイラルに陥ります。これはまさに「アルコール依存症」になってしまう、典型的なパターンです。
お酒を飲まないと眠れないのであれば、医療機関を受診して睡眠導入剤を処方してもらった方が何倍も良いでしょう。もしそうする場合は、睡眠導入剤と寝酒が被らないようにしましょう。相乗効果によって、ふらつきやおかしな行動が生じる危険性があるからです。
そして、タバコと同様にアルコールも睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性があります(5)。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠にとって非常に重要な問題なので、稿を改めて解説します。