スペイン人のシエスタは理にかなっている
まずは日中の眠気について解説します。
誰しも、昼食後に猛烈に眠くなったという経験があると思います。
あの眠気については諸説あり、血流が胃に集まるからとか、血糖値が上がった後にインスリンにより下がるからなどと解説されることがありますが、医学的にはっきりと解明されているわけではありません。
そして、あの眠気はそもそも食事とは関係なく、もともと人体に備わっているリズムが一役買っていると考えられるのです。
なぜ、その時間帯に意識レベルが睡眠に傾くのか、はっきりした原因は分かりませんが、その時間帯は日中にもっとも気温が高くなるので、人類は昼寝することによって炎天下をやり過ごしていたのかもしれません。
世界にはシエスタの習慣が残っている国もありますが、それは生物学的には理にかなっていると言えるでしょう。
いずれにしても、眠気がひどいときには、いっそのこと15分から20分ぐらいの仮眠をとることをお勧めします。
誰しも経験があると思いますが、短時間の仮眠であっても眠気はかなり解消されます。その方が、睡魔と闘いながら仕事をするよりも、生産性は格段に上がるでしょう。ただし夕方以降に仮眠をとると、夜間の睡眠に悪影響が出ることがあるので注意が必要です。
次に、眠る直前の時間帯の睡眠禁止ゾーンですが、これもなぜあるのかについては、現時点でまったくわかっていません。ただし、それが「ある」ということはぜひ覚えておいてください。
たとえば、「最近よく眠れていないから早く眠ろう」と思ってその時間帯に床についても、覚醒レベルが上がっているので、まずスムーズには眠れません。「寝なきゃいけないのに」とイライラすると、ますます眠くなくなってしまい、悪循環に陥りますのでご注意ください。
以上のように、覚醒中の意識レベルにも波がありますが、睡眠中も、決して一定ではありません。
私たちの睡眠は大きく「レム (REM)睡眠」と、そうではない「ノンレム(non-REM)睡眠」に分かれています。
「レム (REM)」はRapid eye movementの略で、その睡眠中には、閉じられたまぶたの裏で眼球がグルグル素早く動いていることから、こう名付けられています。
レム睡眠とノンレム睡眠は本質的に異なる睡眠です。冒頭に解説した記憶の整理・定着は、主にレム睡眠で行われています(4)。
そのため、脳は活発に働いており、夢を見るのも主にレム睡眠中です。その一方、体(骨格筋)はスイッチが切られており、体動はほとんど見られません。レム睡眠には、体を休めるという重要な役割もあるのです。
よく聞く「金縛り」は、意識は覚醒しているのに体が動かないということですが、これはまさにレム睡眠中に特有の現象と考えられています。
レム睡眠は脳が活発に働く睡眠である一方、ノンレム睡眠は脳を休ませるための睡眠と考えられています。やっぱり脳もクールダウンする必要があるのです。ただし、ノンレム睡眠中でも夢を見ることがあり、さらにはもっとも睡眠が深い時に夢が一番多いというパラドックスすらあります(5)。
睡眠の深度と脳の活動性にはまだまだ未解明の部分があります。