中国南東部・三亜市を母港とする中国初の国産空母「山東」(中国軍のサイトより)

中国軍が台湾・東沙諸島の奪取演習

 日本のみならず世界中が新型コロナウイルスに釘づけになり、マスメディアもこぞってコロナ話題一辺倒になっている。

 その最中の5月12日、北京共同は「中国人民解放軍が8月に中国南部・海南島沖の南シナ海で、台湾が実効支配する東沙諸島の奪取を想定した大規模な上陸演習を計画していることが分かった。中国筋が11日までに明らかにした」と伝えた。

 見逃してしまいそうな小さな記事であり、中国一流の恫喝行為に過ぎないとの見方がある。

 しかし、もしこれが本当に実行されるならば、中国と米国・台湾との間で緊張が一挙に高まり、大きな紛争に発展しかねない危険性が潜んでいる。

 東沙諸島(プラタス諸島)は、第2次世界大戦終結までは台湾の一部として日本が支配していたが、敗戦後の1947年から中華民国(台湾)が管轄するようになり、現在、台湾が実効支配している。

 東沙諸島は、台湾から南西に飛行機で1時間ほどの南シナ海にあり、円形の典型的な環礁である。

 主に東沙島と東沙環礁、南衛灘、北衛灘からなり、東沙島は約2800×860メートル(陸地部約1.74平方キロ)、環礁水域の面積は約300平方キロであり、環礁の北面外縁は広く、干潮時には水面に露出する。

 東沙諸島は行政上、高雄市に属している。東沙島には淡水があり、樹木に覆われている。東沙空港(滑走路は全長1550メートル)や道路が整備され、高雄市の市営バスも運行されている。高雄市や行政院海岸巡防署(沿岸警備隊)などの職員が駐留している。

 台湾政府は2007年に、東沙諸島を東沙環礁国家公園に指定した。

 台湾は、南沙諸島の太平島(イツ・アバ島)も実効支配しているが、同諸島は中国、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどの領有権争いの中心となっており、軍事的緊張も高い。