東京都の小池百合子知事が、新型コロナウイルス対応でリーダーシップを発揮し、スピードに欠ける国を動かしている。
緊急事態宣言の発出をためらう政府の尻に火をつけ、休業要請先への「協力金」を独自に進めた結果、各道府県が国の交付金を使えるようにもなった。スーパーへの入店規制も開始する。得意の広報活動はヒット連発中で、自宅でくつろぐ様子の動画を公開し、大炎上する安倍晋三首相はかすむばかりだ。
小池氏の国政復帰は徐々に現実味を帯びてきており、このままいけば首相の座も夢物語ではなくなってくる。なお、大阪府の吉村洋文知事が小池氏以上の高い評価を得ているが、本稿では中央政界と至近距離にある小池氏に焦点を当てる。
「協力金」の舞台裏
かつて石原慎太郎都知事(在任期間:1999~2012)が「東京から国を動かす」とぶち上げ、排ガス規制や大手銀行への外形標準課税構想で脚光を浴びたことがあったが、小池氏の国への影響力は石原時代をとっくに超えた。代表的な事例は、小池氏主導で実現した感染拡大防止協力金である。
休業要請に応じた飲食店などを支援する協力金は、財政に余力のある都ならではの取り組みとして注目された。自粛を強く要請されながらも、経済的な支援がほとんどなされてなかった飲食店や歓楽街に対する初めての具体策だった。1店舗50万円、2店舗以上100万円は十分な額とはいえないが、スナックやバー、キャバクラにも届く点で画期的であり、要は「ないよりはマシ」である。政府は約466億円をかけて布マスク2枚を全世帯に郵送している最中だが、こちらはないよりはマシと言われることすら少なく、不良品が流通している始末だ。