スーパーシティの整備の仕方は、大きく分けるとグリーンフィールド型とブラウンフィールド型があります。インフラ整備に関してしばしば使われる言葉ですが、グリーンフィールドとは草が茂っているだけの何もないような土地に、イチからインフラ整備していくという方法。これに対して、ブラウンフィールドは、すでにある設備・都市をリノベーションするという方法です。

 AIやビッグデータの利便性をフルに活気することができる都市をつくるという意味では、グリーンフィールド型でやったほうがよいと思います。しかし、現在のところ、自治体の応募状況を見ると、ほとんどブラウンフィールドで、既存の都市のリノベーションの域を出ていません。

消費者庁の徳島移転はなぜ失速したのか

 次に、もう1つの地方創生の観点についてです。数年前にも首都機能移転と地方創生が一緒に語られたことがありました。

 例えば、消費者庁を徳島に移すというプランがありました。実際に、消費者庁の一部の業務を試験的に徳島に移しました。一時は長官も移るなどして将来的には全面移転を見据えたものでしたが、現在の状況はと言えば、全面移転は見直され、徳島オフィスに残るのは研究拠点だけということになってしまいました。

 さらに、文化庁を京都に移す、というプランもあります。こちらは現在着々と準備中で、今後全面移転がなされる予定です。新庁舎の準備に時間がかかっているため、当初のスケジュール通りには行っていませんが、どうやら全面移転が達成されそうです。

 では、消費者庁―徳島が上手くいかなくて、文化庁―京都が上手くいきそうだという違いはどこから生まれたのか。

 おそらくその要因の一つは、徳島と消費者庁との間にあまり文脈がなかったからではないでしょうか。なぜ消費者庁が徳島なのか、という必然性が希薄だったのです。一方、文化庁と京都というのは、「やっぱり日本の文化と言えば京都」と言えるような文脈がありました。文化庁と京都という土地に親和性があった。その違いではないでしょうか。そう考えると、首都機能移転にも、しっかりした文脈、親和性というものが求められることが分かります。