まず景気浮揚の観点ですが、かつての首都機能移転の議論の時には、単純に公共事業としての景気浮揚効果が謳われてきました。さまざまな施設を東京から移さなければならないので、道路を整備したり建物を立てたりというインフラ整備的な意味での景気浮揚効果が主に注目されてきたわけです。
しかし、人手不足があちらこちらで起きている現在では、巨大ゼネコンを頂点とし二次下請け、三次下請けと仕事とお金が流れていく旧来型の経済波及効果は機能しづらくなっています。景気浮揚効果を最大化しようと思うのならば、こうした公共投資にも「ワイズスペンディング」(賢い支出)の発想が必要になります。
その文脈で考えれば、首都機能の移転先となる都市の整備には、テクノロジーを重視したインフラ整備が不可欠です。新しい都市をつくっていくときに、AIやビッグデータを活用し、自動運転などのテクノロジーも思い切って投入する。そういう取り組みが大事になります。
全く新しい都市計画の発想「スーパーシティ」
現在政府が進めている「スーパーシティ構想」というものがあります。まさにこれがAIやビッグデータを活用し、これまでとは一線を画した暮らし方やビジネスを実現させるような都市を設計するというものです。この2月には、スーパーシティ法案が閣議決定され、おそらく今国会で可決されるはずです。いま各自治体が応募し始めている状況です。
このスーパーシティ構想の下敷きには、アリババの本拠地がある中国・杭州やカナダのトロントの存在があります。こうした都市では、わかりやすい事例では、例えば信号機も決まった時間間隔で変わるのではなく、車の往来を確認して、それに応じて、もっとも交通がスムーズに流れるよう自動的に変わるようになります。このように、都市全体をデジタルでアップデートしてしまおうという潮流が世界で起こっているのです。そういうことを日本の政府も意識しているのです。
まったく新しい都市設計の発想ですから、景気浮揚効果、経済活性化という意味は非常に大きくなるはずです。