ちなみに、首都移転、つまり遷都の取り組みは世界のあちらこちらでも進行しています。例えばエジプトは、現在の首都カイロの近郊に新首都を建設中です。ミャンマーでは2006年に、ヤンゴンから300キロ離れたネピドーに首都を移しました。

 またインドネシアでは、首都と現在のジャワ島ジャカルタからボルネオ島の東カリマンタン州に移転するという大胆な計画を進めています。地方創生とスマートシティ計画を同時に進めようという目論見です。ここに絡んでいるのがソフトバンクの孫正義さんです。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領に、新首都に最大400億ドルの投資をすることを申し出ています。

 さらにジョコ大統領は、二期目を迎えた際の組閣で、教育相に国内の若きベンチャー起業家ナディム・マカリム氏を起用しました。ナディム氏は、ライドシェアから始まって総合物流企業に発展したインドネシアのベンチャー企業の雄ゴジェックの創業者です。先進国入りを目標にしているインドネシアは、首都移転を起爆剤に、一気にそれを達成しようとしています。首都移転には、それくらい大きなインパクトになるのです。

実は日本人が得意な「首都移転」

 実は世界の遷都には、日本人が関わっていることも少なくありません。

 例えば1991年にラゴスからアブジャに首都を移転させたナイジェリアですが、その市街地中心部分のマスタープランを作成したのは建築家の丹下健三氏でした。

 また1997年にアルマトイからアスタナ(現ヌルスルタン)に遷都したカザフスタンでは、新首都の都市計画を黒川紀章氏が作成しています。

 そう考えると、日本人というのは実は都市マスタープランを考えるのは得意中の得意なのです。それを首都機能移転の際に自国で実践して、日本の都市計画の優秀さを示すというのも、世界に対する大きなアピールになります。

 東日本大震災や今回の新型コロナの感染拡大を経験し、われわれは東京一極集中の危険性を改めて痛感したはずです。リスク分散、景気対策、そして地方創生という一粒で三度美味しい起死回生の策を単なる絵空事で終わらせないことが重要ではないでしょうか。今こそ、首都機能移転を実行するときに来ていると思います。