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(新村 直子:医療健康ジャーナリスト)

 経団連が会員企業を対象に2月28~3月4日に行った調査によると、テレワークを実施している、または実施予定の企業は約7割(68.6%)に達した。とはいえ、人が多く集まるジムにも行きづらい今、気になってくるのが身体不活動(physical inactivity)、そして「座り過ぎ」による健康リスクだ。前編「テレワークが招く運動不足、『きくち体操』で解消を」に続くこの後編では、家にこもり座り時間が長くなることによって引き起こされる健康リスクを解説しつつ、腰痛の改善・予防に最適で、免疫アップにもつながるメソッドを紹介していこう。

日本人は、世界一座り時間が長い

 新型コロナウイルス禍のさなか、日本中で外出を控えるムードが続いている。気づいたら、「今日は家から一歩も出ずに、仕事をしてしまった」という人も少なくないのでは?

 そもそも、日本人は世界一座っている時間が長い国民であるという研究がある。座り過ぎの研究が盛んなオーストラリア・シドニー大学の研究者らが2011年、各国の1日の平均座位時間を調べたところ、日本人は420分(7時間)と世界20か国の中で最長だった(注1)。

(注1)Bauman A, Ainsworth BE, Sallis JF, Hagstromer M, Craig CL, Bull FC, et al. The descriptive epidemiology of sitting. A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ). Am J Prev Med. 2011;41(2):228-35.

 座り時間が長いからと言って、何か悪いの?と思うだろうか。長時間座ったままの姿勢でいることは、股関節の筋肉が硬くなるなど、体への負担が思っている以上に大きい。背中に圧力もかかるため、腰に痛みが来るし、首や肩が凝り、頭痛や目の疲れにもつながっていく。体内への影響も深刻だ。座り時間が長いと下半身の大きな筋肉が使われないこともあり、血糖値や血圧が上がりやすくなり、血流が悪化する影響も。エコノミー症候群を、自ら招いているようなものなのだ。

糖尿病・がん・心血管疾患・認知症のリスクに

 成人の座り過ぎに関する複数の研究をまとめた、エビデンス水準の高いシステマティックレビューによると、座り時間の長さは、「糖尿病・がん・心血管疾患」の罹患率、「がん・心血管疾患」による死亡率の向上と関連することが証明されている(注2)。スペイン在住の60歳以上の高齢者を9年追跡した調査によると、1日の平均総座位時間が8時間未満の人は8時間以上の人に比べ、総死亡率が30%も低いという報告がある(注3)。身体的な影響のみならず、近年は、うつ・認知症などメンタルや脳への悪影響を指摘する研究も出始めている。

(注2)Biswas A, Oh PI, Faulkner GE, et al. Sedentary time and its association with risk for disease incidence, mortality, and hospitalization in adults: a systematic review and meta-analysis. Ann Intern Med. 2015;162(2):123-32.

(注3)Martinez-Gomez D, Guallar-Castillon P, Leon-Munoz LM, et al. Combined impact of traditional and non-traditional health behaviors on mortality: a national prospective cohort study in Spanish older adults. BMC Med. 2013;11:47.

 座り時間が長時間化することによって、引き起こされがちなのが腰痛だ。平成28年の国民生活基礎調査によると、30代以上の男性では、自覚症状がある病気の1位が「腰痛」。多くの人が悩む病気だけに、「腰痛は昔からの持病だから」と放置してしまい、異変に気づいた時には脊柱管狭窄症に進行していたという例も少なくない。