(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
毎年災難に襲われる半導体業界
2018年に米中ハイテク戦争が激化した。昨年2019年には日韓貿易戦争が勃発した。そして、東京五輪が開催される今年2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が世界中に広がっている。半導体業界を直撃する災難(しかも人災)がこんなに毎年続けて発生し続けると、「いい加減にしてくれ」と恨み節の一言も言いたくなる。
半導体業界では、本格的なビッグデータの時代を迎えた2016年からメモリ市場の爆発的な成長が始まった。ところが、PC用プロセッサの約80%、サーバー用プロセッサの約96%を独占している米インテルが2016年に、最先端の10nm(ナノメートル)プロセスの立ち上げに失敗したため、世界的にプロセッサの供給不足が起きてしまった(「プロセッサ供給不足で謝罪したインテルの異常事態」、JBpress、2020年1月3日)。
そのため、PC用やサーバー用をあてにして製造されたDRAMやNANDなどのメモリが市場に溢れ、価格暴落を引き起こしたため、メモリバブルが2018年第3四半期に崩壊し、2019年はメモリ大不況の1年となってしまった(図1)。
(出所:WSTSのデータ基に筆者作成)
そのメモリ不況も、2019年第3四半期辺りから回復の兆しを見せ始めていた。ただし、メモリごとの出荷額を見てみると、NAND市場は出荷額が増大して回復傾向にあるが、DRAM市場は出荷額の下落が止まったまま横ばいとなっている(図2)。そのような時に、新型コロナウイルスの騒動が降ってわいたわけだ。
(出所:WSTSのデータ基に筆者作成)
本稿では、まず、メモリ価格を分析することにより、DRAMとNANDの出荷額の回復状況が異なる原因を論じる。次に、その上で、新型コロナウイルスの感染拡大の騒動が、メモリ不況の回復に影響を及ぼし始めている現状を論じる。結論を先取りすると、2月末時点では、その影響は軽微であるが、3月以降、被害が拡大していくことが予想される。