我が国でのマイクロプラスチック対策といえば、プラスチック素材を使ったストローやレジ袋の廃止など、一部商品について取り沙汰されることが多いのですが、それではこの問題の根本的解決とはなり得ません。我々の産業や生活全般を見渡して、根本原因を探る必要があります。
ところが、その調査手法は確立されていません。日本では、環境省が日本海周辺の海域での調査を行うにとどまっており、各地域で調査を行うとすれば、その調査手法の確立と標準化が必要となってきます。
2019年5月まで神奈川県川崎市議会議員を務めていた筆者は、その当時、議会という立場を活かしてできることもあるのではないかと考えました。
そこで、まず先に議員として調査を行い、ある程度信頼できるデータを提示することができれば、今後の道筋もつくのではないかと考えました。
川崎市において、プラスチックがどこから流出しているのか、また、流出している製品は何か、その用途は何かを絞り込むことを目的として、実態調査を行いました。本レポートは、2018年8~9月にかけて川崎市内の河川や港湾、計14カ所で実施したマイクロプラスチック等の浮遊状況調査とその結果について報告するものです。
川崎市で調査を実施
調査に当たっては、環境系ベンチャー企業である、ピリカ(https://corp.pirika.org/)に協力をお願いしました。ピリカでは、東京理科大学の二瓶泰雄教授(環境水理学、河川工学、数値流体力学)、片岡智哉助教(海岸工学、水工学)らのアドバイザリー協力の下、NOAA(米国海洋大気庁)が公開している調査手順書を参考に浮遊するマイクロプラスチックの調査を行う手法を開発していたためです。また、ピリカは、マイクロプラスチックの調査だけでなく、ポイ捨てごみの調査など社会課題の解決に取り組む若手エンジニアが立ち上げたベンチャー企業でもあることから、その活動を後押ししたいという意図もありました。
そのため、今回の調査内容および結果は、全てオープンデータとしてピリカが公表することについて同意しています。
ピリカでは、調査に河川や港湾、下水処理施設など、さまざまな場所で利用可能な(マイクロ)プラスチック浮遊量調査装置「アルバトロス」(特許出願中)を用います(図2)。これはバッテリー駆動のスクリューで水面付近の水をネットに取り込み、濾過して、浮遊マイクロプラスチックを採取する装置です。橋上または船上などから収集機を水中に沈め、3分間で濾し取った固形物を収集します(写真1)。収集機のネットの網目は0.3ミリ、3分間で5~10立方メートルの水を濾過し、固形物を採取します。