筆者から言わせると、「半グレ」は半グレに非ず。彼らは「グレグレ」「全グレ」であり、れっきとした犯罪・非行的集団である。

「半分カタギで、半分犯罪者」などという輩は存在しない。オレオレ詐欺やアポ電強盗が「ハーフクライム」なら、「フルクライム」とは余程凶悪な「強のつく」犯罪しか残らなくなってしまう。それならば、路上で殴打した、女性にわいせつな行為をした等は犯罪の内に入らなくなってしまうのか。そんな道理が通るはずがない。犯罪に「半分」も「全部」もない。故意または過失によって他人に何からの損害を与える行為は、全て不法行為であり、れっきとした犯罪なのである。

 暴力団の取材を重ねるうち、昨今の裏社会に言及する上では、半グレのことも避けて通れなくなってきた。現時点では学術的な研究ではないので、以下では、筆者がインタビューした限定的な範囲で半グレの実態を要約し、筆者なりの見解を述べたいと思う。

半グレの定義を整理する

 半グレという用語が定着したのは、ノンフィクション作家の溝口敦氏が、新書で『暴力団』(新潮新書、2011年)を著し、半グレについて言及した頃からではないかと考える。溝口氏は、同書の第六章 代替勢力「半グレ集団」とは――において、半グレを次のように解説している。

「半グレとは暴力団から距離を置くものであるといいます。その理由は、暴力団に入るメリットがなくなったからです。若い暴力団員が貧しくなり、格好良くなくなりました。暴走族を惹きつける吸引力を無くしています。暴走族としても、今さら暴力団の組員になっても、先輩の組員がああいう状態では、と二の足を踏みます……暴力団に入ると不利なことばかりですから、わざわざ組員になって、苦労する気になれません。それより暴走族のまま、『先輩――後輩』関係を続けていた方が気楽だし、楽しいと考えます」

「彼らがやっているシノギは何かというと、たいていのメンバーが振り込め詐欺やヤミ金、貧困ビジネスを手掛け、また解体工事や産廃の運搬業などに従っています。才覚のある者は、クラブの雇われ社長をやったり、芸能プロダクションや出会い系サイトを営んだりもしています」

「こういうシノギに暴力団の後ろ盾がある場合もあるし、ない場合もあります。ですが、ほとんどのメンバーはない方を選びます。下手に暴力団を近づけると、お金を毟られるだけですから、できるだけ近づけたくないのです」と。

 この本を溝口氏が執筆していた時期、すなわち、2010年11月には、市川海老蔵殴打事件が六本木で発生した。実行犯は関東連合と呼ばれる半グレ集団である(当時)。彼らは、東京の六本木に活動拠点を置く、暴走族・関東連合のOBからなるグループである。

*写真はイメージです

 この事件以降、「半グレとは暴力団なの?」というような感じで、世間の注目が集まった。その時、世間の疑問に答えたのが、溝口敦氏の『暴力団』だった。