子どもと一緒に自然に神秘に驚いてみる

 そういわれてみると、思い当たるフシがある。次のような経験をしたことがあるからだ。

 和歌山県すさみ町に海水浴に行ったとき、夕方になって帰ろうとする親子がいた。「せっかくだから、星空を眺めてからにしませんか。ここは本当に星がよく見えるんですよ」と声をかけると、星を見てから帰ろうか、ということになった。

 食事を終えて、電気を全部消した。真っ暗闇。やがて、空の様子が見えてきた。

「あら~残念、曇っているみたいですね」という。

 私は「違いますよ、あれ、雲じゃなくて天の川。霞みたいに見える一つ一つが星ですよ。暗い星まで見えるから雲みたいだけど、見ていたら、雲は動くけれど、星は全然動かないですよ」

「いやいや、あれは雲でしょ?」。信じようとしない。が、しばらく見つめていると、小さなちぎれ雲がそれなりの速度で空を動いていくのに、雲と思った全天の「なにか」は、動かない。

「え・・・これ、ぜんぶ星なんですか・・・へええ・・・」

 お父さんお母さんがすっかり魅了されているのを感じて、どうやら大変なものを目撃しているらしい、と感じている男の子。

*写真はイメージです

「あ、ほら、あれ、人工衛星。他の星は動かないけれど、あれだけものすごくゆっくり動いているでしょ。飛行機は早いけど、人工衛星はものすごくゆっくり動きます」

「え! 人工衛星って見えるんですか!」またまた驚くお父さん。

「我々は、地球の影にいるから夜ですけど、人工衛星はずっと空高く打ち上げられているから、まだ太陽の光が届いて、こうして反射して光って見えるんですね」

「はあ、あそこはまだ昼なんですか! へええ!」

 人工衛星を凝視する男の子。

「一番近くの恒星でも、4光年ほど離れているんですって」

「こうねん、ってなんですか?」

「光って、1秒間に30万キロ進むんですって。そんなに速い光なのに、1年かかる距離が1光年。4光年は、その4倍」

「え! そんなに遠いところから見えているんですか!」

「不思議ですよねえ、いま、我々が見えているのは、あの星の何十年、何百年も昔の光だから、もしかしたら今頃は爆発してなくなっているかもしれないんですもんねえ」

「え! 今の姿が見えているんじゃないんですか! へええ!」

 なんだかすごく不思議ですごいものを見ているのだ、と、ますます星空を真剣に眺める男の子。

 結局その親子は、私たちが眠ることにしてもなお、夜空を眺め続けていた。翌日、私たちが帰ろうとすると、「せっかくだから、今夜も星空を眺めようと思います」と言って、その親子は残っていた。

 私は思った。「あの男の子、きっと宇宙好きになるな。テレビや本で星に関するものを見つけたら食いつくようになり、私の知識なんかあっという間に追い抜くだろうな」と。

 ここで肝心なのは、いろいろ豆知識を披露した私ではない。自然の不思議さ、神秘さに目を瞠り、驚きの声を上げていた男の子のお父さん、お母さんの姿だ。どうやら自分の目の前にしているものは、とてつもなくすごいものであるらしい、と感じると、子どもは強い関心を持つ。知りたいと願うようになる。それが強い学習意欲へとつながる。

 そう、「出藍」の秘訣は「驚く」ことにあるのだ。教えるなんて必要はない。世の中にはいろんな本がある。教材がある。指導者の自分が教えなくても、子どもが関心を持てば、いくらでも自発的に学ぶための材料は世の中にある。

 それよりも、自然の不思議さ、生命の神秘さに目を瞠り、共に驚き、共に楽しむことの方が大切。世界って、美しい。面白い。そう子どもが共感したとき、自然に学ぶ意欲は生まれる。「知らない」を「知る」に変えたくなる。学習意欲は、「センス・オブ・ワンダー」が源泉だと言える。