子どもは大人を「驚かせる」のが大好き

 それともうひとつ、子どもの成長に「驚く」ことも、学習意欲にドライブをかけるもうひとつの秘訣だ。『赤毛のアン』のマシューや、『大地の子』の養父は、主人公の成長に驚き、楽しんでいた。それらの作品の主人公は、自分の成長で驚かせたくて、楽しませたくて、喜んで学んでいた。そう、子どもは「驚かせる」のが大好きだ。

 これは恐らく、赤ん坊の頃の原体験が基礎になっている。私たち大人は、赤ん坊に何も教えることができない。言葉が通じないから、歩き方も、言葉の話し方も、教えようがない。ただひたすら、成長を願うしかない。そしてある日、片言を発したり、両足で立ったりしたとき、驚き、手を叩いて喜ぶ。それが赤ん坊はうれしくて、もっと言葉を話そうとする。立とう、歩こうとする。大人たちを驚かせたくて。

*写真はイメージです

 これは恐らく、子どもだけでなく大人になっても、いや、老人になっても残る感情だ。自分の成長で人を驚かせたい。こんなワクワクする楽しみは、なかなか他にない。

 そう。指導者を超える弟子を育てる方法とは、「驚く」ことだ。相手が子どもなら、自然の不思議さ、生命の神秘さに共に驚き、楽しみ、この世界は美しく、そして面白いという感覚(センス・オブ・ワンダー)を育むこと。それが学ぶ原動力になる。

 そして相手が子どもでも、あるいは大人であっても、学習意欲、成長意欲に火をつける方法は、「驚く」こと。もう少し細かく表現するなら、その人が取り組む工夫、努力、苦労に驚き、面白がること。

「え! それどうやってるの? へえ! うまいことやったねえ! 面白い!」

 相手の施した工夫に驚き、面白がると、もっと工夫を重ねよう、そしてそれで驚かせてやろう、と、学習意欲、成長意欲にドライブがかかる。教えようとしなくっていい。ただただ、相手の工夫、努力、苦労に驚き、面白がっていればいい。

 拙著『自分の頭で考えて動く部下の育て方』や『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』は、前者が部下の指導を、後者が子育てを念頭において執筆したものだが、両方とも「出藍」をいかにして実現するか、ということを目指している。子どもや部下の工夫に驚き、努力することに驚き、苦労をいとわないことに驚く。そして、共に目の前の現象を面白がる。そうすれば、部下も子どもも、成長意欲にドライブがかかる。そうなれば、あなたの能力とは無関係に、部下や子どもは自らの力で成長し始める。

 指導者の至上が、指導者よりも優れた弟子を育てることにあるのなら、恐らくは「驚く」ことこそ、「出藍」の秘訣であるように思う。この秘訣を、もっと多くの人たちに知っていただきたいと強く願っている。