つらい副作用を和らげる方法は?

――つらい副作用が出ると精神的にもまいってしまいます。これらを和らげる方法はあるのでしょうか。

下井 出てしまった症状を和らげるいくつかの治療を除き、残念ながら、推奨できる予防方法はありません。通常の加齢の場合に有効とされているホルモン補充療法は、エストロゲン+プロゲスチンを使うと健康な女性の場合5年間で0.25%乳がん発生のリスク増加があるとされています。ホルモン受容性乳がんの患者さんやサバイバーにとっては、がんのエサである女性ホルモンを増やすわけですから、再発のリスクが高まるので日本乳がん学会では「ホルモン補充療法はおこなうべきではない」というステートメントを出しています。

 また、ホットフラッシュに対しては、抗うつ薬のSSRIが有効だというデータがありますが、これは体内のタモキシフェンを分解促進して量を減らしている可能性があり、ホットフラッシュを低減する効果はあるけれども、逆に乳がん治療の効果が薄くなるのではという指摘があります。

――すると、治療中に十分な説明が無いままに心療内科などでSSRIを処方されて服用すると、肝心のがんの治療に影響するかもしれない?

下井 そうです。大豆イソフラボンやハーブなどのサプリメントや漢方薬も試みられているのですが、プラセボ(偽薬)よりも効果的だというデータは、現在のところ得られていません。身体に毒でなければ試してもよいでしょうが、SSRIのようにがん治療の効果を弱める可能性もあるため、医師としては「有用かどうかわからないものは避けていただきたい」と言うことになりますね。他の診療科で治療を受ける時や、サプリメントを試す時は、まずがんの主治医に相談していただきたいです。

――確実に和らげる方法がない中で、治療中の患者や症状のあるサバイバーは、どのように更年期症状と向き合うことができるのでしょうか。

下井 ホットフラッシュの緩和に関して、鍼灸やヨガに効果があるのではないかと検討されています。海外では鍼灸治療や、そのためにプログラムされたヨガを実施すると、受けない場合よりもホットフラッシュの頻度が減ったという報告がすでにあります。鍼灸なら日本ではなじみもありますし、たくさんの鍼灸院があります。ただし、医学的に効果が見込まれる経絡はWHOで厳格に定められているので、医師としては一般の鍼灸院で効果のある施術が受けられるとは断言できない状態です。

 不眠については、睡眠導入剤を使ったり、生活スタイルを改善していくという対応があります。実はホットフラッシュが原因だったり、関節の痛みで眠れないというケースもあるので、うまく切り分けてそれぞれに対応する必要があります。患者さんだけでそれらを判断するのは難しいこともありますから、看護師などの医療スタッフに不眠の状態やつらさ、生活スタイルを相談していくといいと思います。

 筋肉や骨・関節の痛みについては、鎮痛剤で様子を見るしかないというのが現状です。しかし、ホルモン療法によって筋骨格系に症状が出る人は、治療効果が高く再発のリスクが低くなるという研究結果があります。患者さんはつらいですが、逆にこのような良いデータもあるので、がんばっていただけるかご相談しています。そのつらさを乗り越えるのに鎮痛剤だけで無理なようであれば、ホルモン療法の薬剤を変えるという選択もあります。また、一般的な更年期症状で行われている認知行動療法によって、つらさや痛みを自分の身体の一部として受け入れるという心理面からのアプローチもあります。