数多ある「長生きの秘訣」は真実なのか? テレビをはじめとする健康情報に振り回されて右往左往する私たちに、人生100年時代の医療との付き合い方を医学博士の米山公啓氏が指南する。(JBpress)

(※)本稿は『長生きの方法〇と×』(米山公啓著、ちくま新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

医療からの卒業

 私は医師として40年近く、作家として20年以上にわたって、高齢者の医療に携わってきました。外来診療では、認知症の患者さんやその家族と毎日のように接しています。同時に私自身も高齢者になり、60歳を過ぎたあたりでどう生きていけばいいのかと迷い、いろいろなことに挑戦してきました。

 こういった試行錯誤を通じて見えてきたのが、ある時期がきたら、医療から卒業することが必要ではないか、ということです。

 80歳を過ぎてまで、糖尿病を恐れて好きなまんじゅうを我慢するのが幸せでしょうか。

 この我慢が、健康に長生きすることにつながるという医学的な根拠はあるのでしょうか。

 今の世の中では、高齢になっても医療と関わり続けることで、人生の最後の時間にさまざまな制限を受け、楽しみを失っている方がたくさんいます。

 そう考える人にとってまず必要なのは、長生きの方法や幸せな老後についての思い込みから自由になることです。